【短編小説】花火を見る君、君を見る私。
バァアン___ 「すごいね、」 君は花火を見て、そう言う。 「好きだよ、」 私は君を見て、小さすぎる声でそう言う。 ------------------------------------ 今日は花火大会。あと何分かで花火の打ち上げが始まるらしい。 普通の花火大会ならこんなにワクワクはしない。わざわざ可愛い浴衣をお母さんに借りて身に纏うこともないし、仲の良い夏凛や紬の誘いを断ることもない。こんなにワクワクしてるのは私の初恋の人、飯川拓くんと花火大会に来ているからだ。 「遥ちゃん、あと2分だって!楽しみだね」 「ね、ここ凄いんだよね?ドキドキする、」 拓くんがいるから、なんてことは言えない。今日この日、自分の気持ちを伝えると言ったときには、夏凛達から『いい報告待ってるね』などと言われた。 バァアン___ 始まった。音でそう察知するけど、拓くんの綺麗すぎる横顔を見ていると花火に目が向かなくなってくる。 「綺麗だね、」 君は花火を見ながら美しい横顔でそう言った。 「綺麗だね、」 私は君の横顔を見ながら、そう言った。 「ほんと、凄い、」 花火を見ながら楽しそうにそう言う君。 「好きだよ、」 小さく、拓くんには聞こえない声でそう言う私。 「ねぇ拓くん、花火じゃなくて、私を見て」 「え、」 花火を背景に、告白するなんて、ドラマチックすぎるだろうか。うちの意地悪なお兄ちゃんは、痛いと言って笑うだろうか。笑われてもいい、ただ私は自分の気持ちに嘘をつきたくない。 「好きだよ」 今度は大きな声で言えた。 さっきはあんなに拓くんを見れていたのに、今はどんな顔をしているのか私は見ることができない。 「ごめんね」 次に他に好きな人がいるんだ、と拓くんは言った。あぁ、終わったんだ。そう思った。 そこから、「ごめん、ちょっと帰る」と涙を堪えながら帰った。え、と拓くんは言っていたけど、追いかけてはこなかった。私も後ろを振り返ることはなかった。 「ごめん、振られた」 夏凛や紬に泣き腫らした顔を見せたくなくて、毎日しているビデオ通話は断り、音声通話にしてもらった。 「なんで謝んの、?よく頑張ったじゃん」 「ってか拓くん酷くね!?こんな最高な女の子振るなんて!!見る目ないじゃん!!」 淡々と慰めてくれる夏凛と、私のためにびっくりするくらい怒ってくれる紬。 私の初恋は花火のように散ったけれど、 私は前を向いて、良い仲間がいることを忘れずに次の恋に進んでいこうと思う。 ------------------------------------ どーも、翠です 臭いことを言うかもしれませんが愛は花火と一緒だと思います。愛の形は様々だし、迷惑をかけてしまうこともあるし、いずれは散っていきます。だから儚い雰囲気があるのかななんて、そう思って小説を書きました。