ウサギのお面
ウサギのお面をつけた子が、ベンチに座ってた。 だれかと待ち合わせをしてる様子でもなく、日向ぼっこをしているのかと思った。 その子はお昼になってもベンチから離れず、 お昼ご飯はどうするのかと思った。 僕はただ散歩をしてた時に見かけただけだが、 午後もそこに行くことにした。 その子はまだ座ってた。 このまま夜まで座っているつもりなのかと、ゾッとした。 人見知りの僕は、得体のしれないようなこの子に声をかけるなど とてもじゃないけど無理だった。 だけど、どうしてもむずむずするから、言った。 なんで、ずっとそこに座ってるの。 するとその子は、すかさず答えた。 家出してるの。と。 その子はそのあともピクリとも動かずにベンチに座ってた。 僕に家出経験がないからなのか、ものすごくびっくりした。 そして、黙りこくった。 その子は夜になっても帰ろうとしなかった。 僕は、帰ったけれど。 次の日、ベンチにその子はいなかった。 でも、お面と手紙が落ちてて、 見ていいのか分からないまま僕は封筒を開いた。 書いてあるのは一言。 『ありがとう、じゃあね』 ただ、それだけ。 だれに対してなのか分からない。 僕かもしれないし、僕じゃないかもしれない。 だけど、不思議と心があったまって、 僕はお面を手にした。