秋空の唄 ー届け!俺の歌ー
「俊くん」 俺・遠野俊の胸がドクンと鳴った。 この高くて綺麗な声、間違いない寺乃美歌だ。 俺は声の方に体を向けた。 「今部活終わった?」 俺はサッカー部だ。 「あぁ、美歌も終わったか?」 美歌は合唱部だ。 「うん、い、一緒に帰ろう」 俺の顔はたぶん今顔面真っ赤だと思う。俺たち付き合ってるんだ。 「……」 「……」 沈黙が続く。なに話したらいいか分かんないっ!俺たち付き合いたてなんだよー。 「ゆ、夕日が綺麗だな」 とっさになって視界に入った夕日のことを言った。 「うわぁ、素敵」 そんな事言っている美歌の顔が夕日で真っ赤に染まった。そんな顔がいつもより百万倍美しい。 「夕日よりも綺麗……」 思わず呟いてしまった。 「ん?」 美歌にはぎりぎり聞こえなかったようだ。一安心して 「いや、なんでもない」 「そう」 と美歌は一つ区切ってから 「俊くん、なんの季節が好き?私ね秋かな。ほら夕日が一番綺麗に見える季節」 へぇ、美歌の新しい事が知れた。秋ってちょうど今の季節だ。 「俺は……」 なんの季節が好きだろう。春?夏?秋?冬? するとさっきの夕日の会話を思い出した。夕日に染まった美歌の顔も思い出した。俺は美歌の顔をもう一度見た。夕日で美しくなりすぎてなんかまともに見れない。美歌と見る夕日が俺は好きだ。俺は夕日を見た。 「俺も秋かな。夕日がいい」 と言い直した。『夕日がいい』じゃなくて正しくは『美歌と見る夕日がいい』なんだけどね。 すると突然美歌が歌い出した。その歌は秋とか夕日にまつわる歌だった。その歌声がとても美しい。 この歌を歌うこの声この歌も好きだな。 美歌と別れると心にぽっかり穴が空いた気分だ。 家に帰ると急いでお母さんが走って来た。 「美歌ちゃん交通事故にあったそうよ!A病院に運ばれたんだって!」 俺は頭が真っ白になった。だが慌ててA病院に行った。 病院に着くと美歌はベッドに横たわっていた。 先生の話によると命に別状はないらしい、がもしかすると後遺症は残ると言われた。 「美歌……」 すると美歌がゆっくり目を開けた。俺は目を見張った。 「美歌!あぁ、よかった」 それなのに美歌は何一つ話そうとしない。 先生の話によると美歌は交通事故の後遺症で声が出せなくってしまったと言う。 俺はショックで俺も声が出せなくなるところだった。大事な彼女が声を失うなんて……あの声をもう二度と聞けなくなるなんて…… あの歌をもう二度聞けないなんて…… 俺は家に帰った後必死に美歌の歌っていたあの歌を調べた。 数分後に見つけた。題名は『秋空の唄』。その歌を何度も聴いた。歌詞を全部覚えるぐらい聴いた。その後はその歌を猛練習した。 次の日俺はA病院に行った。 美歌の病室に行くと美歌が悲しそうに外を見ていた。ちょうど夕日が沈む時だ。 「美歌」 俺は美歌に呼びかけた。 「夕日が沈むな」 『うん』と言うように頷いた。 「綺麗だ」 日が病室に入った。そして美歌の顔が美しく染まった。俺は思わず見てしまう。 だがあることに気がついた。美歌の目から涙が出てる。 美歌が泣いている理由が俺には分かった。 ただ声が出せないから泣いているんじゃない。歌いたいのに歌えないから泣いているのだ。辛いだろう。 「俺が代わりに歌ってやる」 俺は精一杯美しい声で歌った。 美歌の目から新たに涙が出てきたその目は『感動』を意味していた。 俺は美歌と見たあの夕日が好きだ。だが美歌の歌も大好きだ。その歌が歌えないなら俺が精一杯愛を込めて代わりに歌ってやる。そしていつか美歌の美声に一番近い歌を歌って大感動してもらう。そのために俺は練習する。