ロボットでも。#恋愛
「愛媛県から引っ越してきました。澄魅 実那です、よろしくおねがいします」 そういいながら笑顔をつくって、教室のドアに微笑んだ。 ・・・緊張する・・・。 私は、澄魅 実那。 今・・・バリバリに緊張してます。 現在、廊下で自己紹介の練習中。 だからドアに微笑むなんて変人のすることをしたんだけど。 というか、本当に緊張する・・・心臓がずっと騒いでるもん。 「・・・実那さん。入ってきてください」 あ、先生の声。 大丈夫、大丈夫・・・ちゃんとできる。 ―――ガラガラガラ。 廊下と同じ、木材のいい香り。 教室のすみには、きれいな花が飾られていた。 「愛媛県から引っ越してきました。澄魅 実那です。よろしくお願いします」 ゆっくり、声の大きさにも気をつけて。 言った後にお辞儀をして、顔を上げると、驚いているクラスの子たちが目に写った。 え・・・? あ、転入生だからか。 えっと・・・これからどうすればいいんだろう・・・。 しーん・・・としていて、自分が動くのでさえ気まずい雰囲気。 助けを求めるように先生を見ると、「それでは」と言った。 「実那さんは、あそこのあいている席に座ってください」 はい、と言ってから、私は先生に指定された席に座る。 それから先生の話が始まって、話を聞くのに集中した。 「ねえ」 「え?」 なんですか?という意味を込めて隣の席の男の子の目をじっと見つめた。 「今日から、よろしくね?」 爽やかな笑顔でそういう男の子に、私も「よろしくお願いします」と笑顔で返した。 それにしても・・・。 隣の席の男の子をちらっと盗み見して、握った手に力を込めた。 かっこいい上に、親切・・・。 だって、転入生にこんなふうにすぐ話しかけられるなんて・・・私だったら無理だもん。 すごいなあ・・・と感心して、一日を過ごした。 今日は、あの子以外の誰とも話さなかった。 だから明日は、他の子とも話してみたいなぁ・・・。 家について、私はポストを開けた。 ん?なにこれ? すごく豪華な手紙・・・自作なのかな、このシーリングスタンプ。 手紙の後ろを見ると、お父さんの名前が書いてある。 その下に小さく、私の名前も。 『Minaのことについて』と書いてあって、「私?」と声を漏らしてしまった。 というか、なんで名前・・・? 私のことについてなら、私が見ても問題ないかな。 そう思って、シーリングスタンプをきれいにはがし、四つ折りにしてある中の紙を広げた。 『koukiさんへ -ロボットMinaについて-』 ドクン。 心臓が、変な音がした。 ロボット・・・?Minaって、私の名前・・・。 『ロボットMinaは、他の人間と変わらない言動をすることができています。 さらに、自我を持ち、感情や表情も、3年前より大変豊かです。 それで、本題なのですが。 Minaは今年中に処分しますか? もし処分を拒否する場合は、10万7千2百円を請求します。 この手紙が届いて一週間後に返事をください』 手紙はそこで終わっていた。 私・・・わたしは、ロボットなの・・・? あれ・・・っ、なんで? 私・・・こんなに今、悲しいのに・・っ。なんで、涙が一粒もでないの・・・っ。 本当に、ロボットなの・・・? 悲しい。 苦しい。 なんで。 どうして。 本当に? 信じられない。 いろんな感情がごちゃごちゃになって、頭が回らなくなってきた。 今日は、寝たい。 ドアに手をのばすと、チャッ、と小さな音がした。 これって、もしかして私の体の機械の音なのかな? お父さんには常に鈴の付いたお守りを持つようにって言われてたけど・・・それって、体の機械の音を私に気づかせないためだったのかなあ・・・。 「澄魅さん!」 ドアを開けたとき、叫んだような大きな声が聞こえた。 「あなた・・・」 隣の席の、男の子。 「どうかした?」 「な、なんで?」 「澄魅さん、泣きそうな顔してる」 「え・・・?」 泣きそうな、顔? 「あのさ・・・泣きそうなところ、ごめんなんだけど・・・」 私は彼の瞳を、朝と同じようにじっと見つめる。 「一目惚れしました!付き合ってください!」 勢いよく頭を下げた彼を見て、私は、いいのかな、と思った。 「いいの?」 「え?」 「私、ロボットなんだって」 言いながら、私はからっとした笑みを見せた。 すると、私のふざけたような笑みとは反対の、真剣な表情で、彼は私を抱きしめた。 「いいよ。ロボットでも」 「・・・っ」 私は、彼を抱きしめ返した。 「ねえ、名前は・・・?」 私を、ロボットでも肯定してくれた人。 「俺は、悠だよ」 悠・・・いい名前。 「悠くん・・・、私を好きになってくれて、ありがとう・・・受け入れてくれて・・・ありがとう・・・」 ―――私はもう一度、きつく悠くんを抱きしめた。