短編小説みんなの答え:1

怜悧女帝

これは、ずっと昔の物語― 地球のどこかで、絢爛(けんらん)という帝国が栄えていた。この帝国を治めるのは代々皇帝と呼ばれる人で、時の皇帝は清廉帝(せいれんてい)であった。 皇帝は代々長男が継ぐことが決まりであったが、清廉帝には長女の怜悧(れいり)しか子供がいなかった。妻は黎明(れいめい)という人だが、ずっと昔に亡くなっていた。この頃は妻は一生涯で一人と決まっていたので、もうこれ以上子供を増やすことができなかった。 まだ5歳の怜悧は、とても賢かった。だから清廉帝は、怜悧を跡継ぎに決めた。 しかし怜悧が6歳の時、清廉帝は亡くなってしまった。跡を継いだ怜悧はこの帝国初の女帝となり、怜悧女帝と呼ばれた。 怜悧女帝は、人を思うことに真剣で、なにより国民を愛していた。 怜悧女帝に密かに恋心を抱く者がいた。鷹揚(おうよう)という17歳の青年である。鷹揚は怜悧女帝のはとこにあたる。鷹揚は、まだ幼い怜悧女帝を支える役を務めていた。2人は何度かこっそり会い、やがて怜悧女帝も鷹揚を慕うようになった。 しかし、これを許さない者がいる。怜悧女帝の叔父で後見人の雅馴(がじゅん)だ。雅馴は2人が恋仲なことを知ると、鷹揚をクビにし、遠くの島に流してしまったのだ。怜悧女帝が10歳の時だった。 愛する鷹揚を失った怜悧女帝は、やがて病気がちになってしまった。そしてついに、15歳になった頃には政治をすることも困難になった。 そんなある日、雅馴が亡くなった。これを聞いた鷹揚は急いて怜悧女帝のもとへ走った。だれも信用できない、流人の身分の鷹揚は、馬に乗ることもためらわれたのだ。5ヶ月かけて、やっと絢爛に辿り着いた。 しかし、その頃には怜悧女帝の命は残りわずかだった。怜悧女帝は鷹揚が来たことを知ると、「ふたりきりにしてほしい」と言い、鷹揚とふたりきりになった。 怜悧女帝は言った。「私の跡を継げるのはあなただけ。私の目指したのは、自由な恋愛ができる世界でした。でも、それは儚い夢でした。あなたのような心優しいお方が皇帝のこの国は、安泰です。あとは頼みます。私はいつも、あの世から見守っています。」そして鷹揚に口づけし、この世を去った。まだ15歳だった。 怜悧女帝の跡を継いだ鷹揚は皇帝となり、怜悧女帝の目指した自由な恋愛ができる世界を創るため、日々奮闘するのだった。 そして、怜悧女帝の想いは、代々皇帝に受け継がれるのだった。

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