まさか、ね。
たくさんの文字を、指でなぞりながら眺める。 私の綴った、私の小説。 かなりの自信作だが、大会に応募するのは少し不安だ。 うまくいけば、小説家になれる。 本屋に私の小説が並ぶ。 誰かが私の小説を読んでくれる。 誰かが私の小説で笑顔になってくれる。 まさかね、と思いながらも、つい鼓動を速めてしまう。 もしかして、慣れるんじゃないか? ずっと夢見ていた小説家に。 そう期待している中、それを冷静に眺める自分もいた。 私なんかがなれるわけない。 私なんかより才能がある人はたくさんいる。 だけど、私より努力してきた人は、きっといない、はず。 すごく不安だけれど、もうやるべきことも、できることも全てやった。 あとは、ポストに小説の入った封筒を入れるだけ。 「いってらっしゃい」 封筒を一回胸に引き寄せて抱きしめてから、ポストに封筒を入れた。 うまくいけば、小説家。 ──まさか、ね。