短編小説みんなの答え:0

かけた記憶

「お前は、死んでるんだぞっ、一週間前、車にひかれてっ」 突然彼の口から思いがけない言葉が飛んできた。彼の目からは、一粒の大きな大きな雨粒が、落ちた。 橋本陽奈。16歳。今日、幼馴染の宮野翔から私は一週間前死んでいたことを告げられた。 その瞬間、全てを思い出した。 家に帰る途中だった。前には幼稚園生ぐらいの小さな男の子がいた。突然、猛スピードで車が走ってきた。通り過ぎる数秒前、男の子は石につまずいたのか、車道に向けて転んでしまった。私はとっさにその男の子をかばった。鈍い音と共に、車が走り去って行った。その後のことは、覚えていない。気づいたら翔の家にいた。 なんで私は死んでいるのに、まだこの世界にいるの? 翔に問いかけても、答えは返ってこない。どうやら声は聞こえていないようだ。 考えた。なぜこの世界にいられるのか、考えた。ずっとずっと考えた。 わかった。答えは目の前にあった。これまでのこと全部のせて。 「ありがとう。」 私のそばにいてくれて、私をかばってくれて、私を元気づけてくれて、私の、私の… そんな思いがこもった言葉を、私は、その一言を目の前の幼馴染に告げた。どうしてか、その言葉だけは聞こえたようだった。最後に、彼の表情を見た。 そして私は、光りながら祈った。神様。どうかこの、ちょっとバカで、運動ができて、本が大好きで、優しい私の大好きな幼馴染を、いつまでも幸せにしてください。 そう願いながら、私はこの世界から姿を消した。 「さよなら」は言わない。 また会えると信じて。

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