君と過ごした淡い夏。
―――気づいたら、手を振っていた。 君もこっちを見てニコッと微笑む。 そしたらなぜだか手を引っ込めちゃって、君は困り顔。 駆け寄っていくと、君も駆けてくる。 「相変わらずだね」 君は笑った。 私を包み込む、花のような笑顔。 「.....ごめんね」 私と君の空間が弾けた。 ----------------------------------- -1日目- 君は隣りにいる。 ここはいつもの公園のベンチ。 「ねぇ、」 「聞いてる?」 君が私の顔を覗き込んだ。 「あっ、聞いてなかった...ごめんね」 謝ると、頭をコツンとこづかれた。 「“ごめん”って、言い過ぎ」 君は笑った。 その笑顔、反則。 思わず膨れると、君は私の頭を撫でた。 「...っ」 恥ずかしくて、うつむく。 君は照れたように、私を抱き寄せた。 ------------------------------------ -2日目- 「おはよう」 私は君に話しかけた。 肩をとんと叩いたら、君は振り向いて笑ってくれた。 「おはよ」 うざったそうに言うが、顔はとってもにやけている。 「なんかあったの?」 「.....なんも無いよ」 そう君は答えたが、顔を隠しきれていない。 「そっか。教えたくないなら、いいよ」 私はそっぽを向いて歩き始めた。 --- しばらくして、君が私に言った。 「さっきはごめんな?はい、これ」 見ると、パイナップルのイヤリングだった。 手紙も添えてある。 「『心晴へ。 誕生日おめでとう。 これからもよろしくな。 陽詩より。』」 「...っ、おいっ!読むな!」 君は焦ったように手紙を奪い取る。 「あっ!ちょっと!」 慌てて手をのばすが君の身長には届かない。 それもなんだかもどかしくって、嬉しくって、笑った。 -------------------------------- -3日目- 「心晴、じゃあな」 今日で君との夏休みは終わり。 君と、おじいちゃんの家でたくさん遊んで騒いだ。 そうして君が帰る頃になると、急にあたりが静まる。 嫌だな、静かにならないでよ。 静けさが君を包み込んで、その背中は今にも消えてしまいそう。 「.....待ってよ」 「.....じゃあな、心晴。」 そうして君は私に背を向けて歩き出した。 その背中が遠ざかっていくのを、私はいつまでも見つめた。 --------------------------------- これは、彼氏でもなんでも無い君と過ごした、 淡い3日間の夏だった。 嬉しかった。 寂しかった。 そして最後は、笑顔で笑って、こう言った。 「「“また”、ね」」