季節はずれのひまわり
隣の席に、ひまわりのようにうるさいヤツがいる。 俺は鶸学尋(ひわまなつ)。俗に言う隠キャ。 そして… 「鶸!おっはー!」 このうるさいヤツは向井葵(むかいあおい)。 「……うるせ」 「えー、何それ!朝からひどくない!?」 (そっちは朝から元気だな…) 「また明日ね、鶸!」 「…………」 「無視ひどい!もう知らない!」 (…どうせ明日も、このうるさいヤツに巻き込まれるんだろうな…) 「はぁぁあ~…」 (今日も向井になんかされるだろうな…) 教室に入ると、向井の机の上に一輪のひまわりが生けてあった。 他のヤツの様子もおかしい。 (…?) チャイムと共に入ってきた先生は、深刻な顔でこう言った。 「…向井葵さんは、昨日…事故で亡くなりました」 「葵ぃ…っ」 「なんで先に逝っちゃうの…」 みんな泣いている。 俺は、泣かない。泣けない。 だって、泣いたって戻ってこない。 それに、向井は元々うざいと思ってたから。 (…よかったじゃねぇか。これからは静かに一人でいられるんだぞ) なのに、なのに…なんか、胸に突っかかる。 ふと、机の上のひまわりを見る。 そのひまわりと、アイツが重なる。 (…このひまわり、向井みてぇ…) はっとする。何考えてるんだ、俺。 …なんとなくアイツとの今までを振り返ってみる。 『(どうせ明日も…)』『(今日も向井に…)』 『鶸、おはよー!』『ひどい!』『また明日ね、鶸!』 …今になって、やっと気づいた。 もうアイツは…向井は、俺の人生に一部になっていたんだ。 そう思うと、胸がギュッとなって、涙かこぼれてきた。 (…何泣いてんだ、俺…っ) 心に穴が空いていた。 その穴を、向井が埋めてくれた。 元気で、明るくて、時には優しくて。 俺の心は、そんな向井を必要としていたんだ。 俺に光を与えてくれた、穴を幸せで埋めてくれた、 全部、全部、向井のおかげだったんだ。 …ありがとう、向井。 生まれてきてくれて、ありがとう。