短編小説みんなの答え:1

小説好きのエソラゴト

~♪ 放課後を知らせるチャイムが鳴り、私はいつも通り図書館に向かう。ここ、私立華宮学園のチャイムは、校歌のメロディというちょっと珍しいものだ。 もう慣れたからなんとも思わないけど、初めて聴いた時はびっくりしたな。 階段を降りて、臙脂色のおしゃれな通路を歩くと、荘厳で立派な建物が目に入った。 うちの学園の図書館は、放課後も入ることが出来る。借りることはできないけど、返したり読書したりするのならOKだ。最近、内部の改修工事があり、本を盗まれることがないように機械で厳重に管理するようになった。昼間はそこそこの数の生徒が来るけれど、放課後になるとあまり生徒は来ない。 だから、今では担当の文芸部員がぐちゃぐちゃな本棚を整理する時間にもなっていた。 重い扉を開けて、私は静かに図書館に入る。同時に、あの独特の空気が体を纏った。 ……はぁ、嫌だな。 文芸部というのは、その名の通り文芸作品を作る部といったところだろう。少なくとも、一般的にはそのイメージでいいと思う。まあ、文芸と言っても様々なジャンルがあるので、小説はもちろん、活動の幅は俳句・短歌・詩など幅広い。 コンクールの文芸部門に出すための作品の他に、学校内で配布する部誌のために作品を作っていたり、部内だけでリレー小説や連歌なども作ったりする。 サッカー部や吹奏楽部など、他の部活と比べて知名度は高くない。部員数も少ないが、うちの文芸部はかなり優秀なほうらしく、大会で大きな賞を取ったことで知名度も上がりつつある。 部員が増えるとこの図書館整理も一人でやることはなくなるのだろうが、今のところ新入部員は0人。だから、私が一人で黙々とやるしかないのである。 そう、ハッキリ言って憂鬱だ。放課後の一時間。たったそれだけなのに、私にとってはめちゃくちゃ憂鬱なのだ。 図書館の重苦しい空気と同調するように、私の心も重くなる。早くノルマを終わらせねばならないと分かっているのに、いまいち気が乗らない。 今日もいつも通りだと思っていた。何も変わらない時間だと、そう思っていたのに。 奥の方に、見慣れない男子生徒がいた。背は低いが顔は整っている、儚げ美少年。一年生の証である黄色いラインが入った上靴を履いている。 男子生徒は文学……特に、ミステリー小説をまとめた箇所を眺めていた。アガサ・クリスティや江戸川乱歩などの有名な小説家はもちろん、推理ゲームのスピンオフなど、様々な作品が並んでいる。 思わぬアクシデントに戸惑いながら、私は本棚の整理を始めた。 うちの図書館はかなり広くて、本の数も多い。噂だと、ここ目当てに入学試験を受ける物好きなヤツもいたらしい。 小説を書くのが好きで文芸部員になったのはいいけど、本棚整理の係に任命されたのは完璧に予想外だった。二学期の間は毎日、このためだけに図書館に通わなければならないという事実に気が重くなり、一瞬、自分の仕事を忘れてしまった。 ヤバいヤバい、早く終わらせないと。 あれから四十五分経った……が、全然終わる気がしない。 毎日、本棚を最低三段は整理しないといけない。ノルマは残り一段と少し、残り時間は十五分。どう考えても絶望的である。こんなことで簡単に絶望してはいけないと思う。思うけれど、現実を見るとますます気が重くなる。最悪の循環だ。 再び本棚の整理に手を付けた瞬間、横からスッと手が伸びてきた。 「手伝いますよ」 綺麗に響く高めの声。視線を真横に移すと、さっきの一年生が立っていた。 「あ、ありがとう」 「いいえ。先輩が困っていたら後輩が助けるのは当然です」 そう言って、彼はパパッと慣れた手付きで整理していく。私は相変わらずの速さだったが、残り一分で本日のノルマの整理が完了した。 「はぁ……お、終わった……」 後輩の助けはあったけれど、初・ノルマ達成だ。私は改めて向き直り、彼に感謝の言葉を伝える。 「本当、助かったよ。ありがとね。でも、明日からはまた一人か」 思わず口にしてしまう。けれど、彼の口から出てきたのは予想だにしない言葉だった。 「明日も手伝いましょうか?」 「え?」 「多分、ノルマがあるんですよね?一時間で三段くらい。このままだと終わらないだろうし、僕もやります」 ほとんど喋らずに整理していたのに、こちらの事情を察知した。しかも当たっている。私は彼の洞察力と推理力に驚きながら返事をした。 「じゃあ、お願いしようかな。えーっと……」 「あ、僕の名前は矢坂蓮(やさか れん)です」 「私は相原水琴(あいはら みこと)。矢坂くん、よろしくお願いします」 「はい」 私が笑うと、矢坂くんも少しだけ微笑んでくれた。 放課後のいつもの時間。憂鬱でしかなかったこの時間が、ちょっとだけ楽しみになった私なのであった。 よければ感想・アドバイスなどお願いします!

みんなの答え

辛口の答え

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かなり好みでした!

雰囲気がかなり好きです! それに、描写もしっかりしていてすごいと思いました。私は景色の描写が苦手なので… 語彙力がないものでして上手く言えなくて申し訳ないのですが、とても好きでした!これからも小説投稿してくれるのであれば、楽しみにしてます!


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