お前と俺
分かってる、分かってるよ。 お前にとっての俺は「親友」ってことくらい。 その関係で充分すぎるはずなのに、俺はそれ以上の関係を求めてしまってる。 お前は男で、俺も男なのに。 お前は男が好きじゃないのに。 こんな厄介な気持ち、今すぐにでも取っ払ってしまいたい。 しまいたいけど、 『俺、お前がいないと生きていけない』 よくそんな言葉をつぶやいていたお前に、 少しだけ、ほんの少しだけ期待をしてしまう。 もしかしたらお前は、俺を、 そんなことをよく考えている。 だからかな、俺は少し浮かれていたんだ。 それだけに、 「俺、彼女できたから」 それだけに、お前が発したその言葉には重みがありすぎた。 「...え?」 心が真っ二つに折れた気がする。 「実はさ、前々からその子のことずっと気になってて。それで今日、その子に告られたから付き合ってみようと思う」 「......」 言葉が、出てこない。 苦しくて、息すらできないようなこんな気持ちに初めてなった。 「どうした?急に黙り込んで」 「...んで...」 「え?」 「なんでだよ...っ。お前は、お前は俺がいないと生きていけないんじゃないのかよ...」 なんで、なんで俺、こんなこと言っちゃってんだろう。 こんなこと言ったって、どうせ... 「何言ってんだお前~。そうだよ。俺はお前がいないと生きていけないよ。 『親友』なんだから」 うん。 うん。知ってた。 お前とっての俺は、たかが「親友」。 俺に向けるお前の目は、照れくささなんて感じさせない、いつも通りの優しい目。 お前に向ける俺の目は、そんなものじゃないのに。もっともっと、それ以上の思いが込もった目なのに。 お前はずっと気づいてくれない。 それはきっと、これからもなんだろうな。 「ねーっ、一緒に帰ろーっ!」 向こうから可愛らしい声が聞こえる。 あの子が彼女、なんだろう。 そんな事実に、また胸がきゅっと苦しくなる。 「おう!今行く!」 そう嬉しそうに答えて向こうに走って行くお前をただ黙って見つめていた。 お前はああいう子が好きなんだな。 俺はどうしようと、あの子にはなれない。 あんな高くて可愛らしい声も、さらさらの長い髪も持っていない。 それどころか、俺が持っているのは低くてがらがらな声と、くせのついた短い髪。 勝てない。勝てる訳がない。 唯一勝てるのは、お前に対するこの気持ちだけ。 お前は好きな子にどんな声で、どんな顔で「好き」と言うんだろうか。 あの子は俺の知らないお前をどんどん知っていくんだろうな。 悔しくて、悲しくて、でもそれにすら俺は気づいてもらえない。 ...俺の方が、ずっと前からお前を好きなのにな。 待って、待ってよ。お願いだから、 俺を見てよ。 そんな心の声は届かず、あの子の隣を歩くお前の背中を見て、俺の目からは何粒もの涙がこぼれ落ちた。