透き通る声はやがて
「あ、またやってる」 公園の方を見て呟く。 ここ最近、女性が朝から歌を歌っている。 近所迷惑かと言われたらいいえと 答えるくらいには周りに建物がない。 そんなど田舎に透き通るような声で歌う女性 は、みんな興味を惹いていった。 その綺麗な歌声に反して、歌うのはいつも、テンポが速くて歌詞に悪い言葉だって使っている曲だった。 もっとゆっくり目で、綺麗な言葉遣いのする 曲にすればいいのに。 通りかかる人は大体思っただろう。 「あの、貴女ってもしかして…!」 空が茜に染まる夕方に、 歌う女性が話しかけてくる。 「なんでしょうか?」 「えと、違ってたら申し訳ないんですけど、もしかして桜凪さんですか?!」 少し興奮気味に女性は話す。 桜凪とは、私がネットの動画サイトの アカウント名のことで、曲を創っている。 最近始めたばかりだが、 とある曲が流行り有名になった。 なぜ本人を知ってるのか心底不思議だったがとりあえず名を名乗っておく。 「えぇ、まぁはい。桜凪です」 「やっぱり!会えて嬉しいです!」 「はぁ。じゃぁ私はこれで」 速く切り上げたくて去ろうとすると、 女性はぎゅっと手を握って離さない。 「待ってください!」 「はぁ?」 「桜凪さんに、歌を創ってほしいんです」 「?いいですけど、テーマとかは?」 「えっと、私のお母さんの話を歌にして欲しいんです」 冗談混じりに聞き始める。 語り出した彼女の瞳は真剣だった。 要約していくと、 お母さんを亡くしてしまったから、 それを曲にして欲しいと言うことだった。 断ろうと思ったが、涙ぐみながら、気持ちを込めて舌を動かした彼女に対して、 「うーんやっぱダメw」 だなんて断るのは到底無理な話だった。 「条件があります」 「なんでしょうか?!」 「貴女が歌って下さい」 「え…わ、分かりました…」 そうして、歌詞を書き起こし、曲を創り、 歌を歌ってもらい、作り終え、投稿する。 反応は「泣いた」「桜凪Pの凄いとこって曲によって作り方の何もかも変えていくところだよな」「そんなにいい曲?」「心に刺さる歌詞だ」など、様々だった。 特に多かったのは「声がとてもいい」だ。 「透き通るみたいな、綺麗な声してる!」 「誰が歌ったのかな?」 「桜凪本人説!」「←それはないだろ」 「何度も聴きたくなる声してる」 それから、彼女に依頼し、 幾つも歌ってもらった。 全てミリオン突破し、 CMに起用されるほどとなった。彼女は今 「ありがとうございますっ!桜凪さんっ!」 夢であった歌い手になり、 テレビ出演も果たした。 とあるテレビ番組で、歌い手になった 経緯を深掘りされていた。 「と、こんな感じです」 少し顔を緩め笑う。 「へぇー。大変じゃなかった?」 女性タレントが尋ねる。 「いえ、全然」 また笑う。 「支えてくださりましたから」 にぱっと笑う。 「親とか親族が?」 空気の読めない男性タレントが尋ねる。 フッと笑い、答える。 「いーえ。親達には逆に猛反対されましたし、動画も見つけて大激怒してましたから支えるなんてあり得ませんよ」 「ふーん」 「で、誰なの?」 少しにやけながら、女性タレントが尋ねる。 「勿論ーーーー桜凪さんにですよ」 満面の笑みを浮かべながら喋る。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「よく頑張りました」 そう呟いたのは肩を震わせながら 涙を流していた背の高い女性だった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 読んでいただきありがとうございます! 今回は駆け足気味に書いてしまいました…… 申し訳ない!本編は、桜凪さんと“女性”が出てきます。桜凪さんと女性の名前を、ここまで読んでくださった方に!教えちゃいます! 桜凪さんは春咲凪(ハルザキナギ)、女性は涼波凛華(リョウナミリンカ)です。彼女達の物語を読んでいただき、改めましてありがとうございました!またお会いする機会があれば、またよろしくお願いします! Fin