gymnopedie No.0
木が軋む音で目覚めた。もう着いたみたいだ。舟は紐で繋がれたが、まだ揺れている。空は曇り、風は冷たい。時計を手繰り寄せ蓋を開く。時針は9のほんの少し上を指している。ゆっくりと立ち上がり、帽子をかぶる。長く緩やかな勾配のある坂道が丘の上の教会まで続いている。ロンドンの空気から逃れてきたが、ここは良い空気の様だ。足を上げ、舟着場に足を鳴らす。L字の足場を右に曲がり、案内される。暗い木の葉は風に散り、地に広がる。言葉を探す間に、彼が言った。 「この3年、軍に勤めていた息子が帰って来ましてね……」彼の話は耳に入らず、湖の中に吸い込まれていく。 その内、彼は話すのを止めた。「どうかしましたか?」「いや、気にせず話してくれ。」「そうでしたか……」 上り終えると、白い壁の協会がそびえ立った。先端の十字架が暗く、それでいて白い色をしてあった。 案内され、中に入る。中は外より寒く、人は一人しかいない。黒いコートを着た、少し長い髪をした紳士だ。どうやら深い祈祷を捧げている様だ。私は興味は湧かないのだが。近づき、声をかける。「お名前は。」「エリック・サティだ。」 「私は」「いいんだ。名前は言わなくて良い。見聞は増やさない主義でね。それで……あの頃の出来事を教えてくれるという事でここに来たのだが……構わないか?」「いえいえ。話させてもらいます。」「すまないな。………それじゃあ、お願いするよ。………………」 辺りは雪一面。すぐそこにに見える風車まで足を運ぶ。その時、後ろから、「すまない!聞いてくれるか!」 振り返った。