ほしぞら公園のふたり
これは、14歳で終わってしまった10年前に話した終わりまでの約束の話。 『ねぇねぇ!よう君はさ、もし地球が明日なくなっちゃうって知ったら、何する?』 『え~そうだなぁ…僕は、けいちゃんと─────────こと、かなぁ』 『それ、いいね!すっごく楽しそう!じゃあ、そのときまで、ずうっと一緒にいようね!約束!』 今朝のニュースを見た時、幼いころの記憶を思い出した。 あの時はまだ、世界が限りある資源を使ってしまうことも、それが改善されないまま、地球に隕石が向かってきていることに対抗策も打てなくなるほど資源が枯渇するなんて思いもしなかった。 私はまだその事実を昔読んだファンタジー小説の中の話のように思っていた。 ─明日の夜中、地球に隕石がぶつかり、世界が終わるということを。 地球最後のその日は自分の部屋でダラダラと過ごすつもりだった。そこに、一通の通知が届いた。 耀『京華に話したいことがあるんだけど、いつならダイジョブ?』 京華『わかった。夕方くらいでいいかな。どこで?』 耀『ほしぞら公園』 ほしぞら公園とは、丘の上の、望遠鏡のある公園のことだ。 私は伝えた時間どおりに家を出た。 「京華、ちょっと待ったんだけど。」 耀はムッとした表情で私の方を振り返って言ってきた。 「ごめん、久しぶりに登ったら思ったよりかかっちゃった。それで、話したいことって、何?」 耀は、私から目を少しそらして言った。 「明日、京華の誕生日じゃん。ホントは当日言いたかったんだけど、やっぱり予報は変わらなかったね。だから、いま言うよ。誕生日おめでと。それと、もう使わないだろうけど、これ」 私に向かって耀は手を差し出した。それは、腕時計だった。 「わ~かわいいデザイン!耀、ありがと。どう?似合う?」 私は耀に向かって、腕を突き出して言った。 「うん。ちゃんと似合ってるよ。……あと、もう最後だから言っちゃおうと思うんだけど、けいかのこと、すきだったよ。言い逃げで、ごめん。」 「え?」 「もう遅くなっちゃたね!まだ少し肌寒いから、早く帰ろ。」 耀はすっと立ち上がり、背を向けた。 「まっ、待って!」 慌てて耀の上着の裾を掴んで叫んだ。 『僕は、けいちゃんと最後まで話し続けること、かなぁ』 「地球最後の日は!ふたりで最後まで話し続けるんでしょ!勝手に終わらせて帰んないでよ…」 途中で恥ずかしくなり、声が消え入ってしまったが、耀には聞こえていたはずだ。 「…そんなことも、昔話したね。」 「そうでしょ!どのみち今日には終わるんだから私の話くらい聞いてってよバカ!言い逃げなんて、させたげないから!私だってすきだもん!それに、ずっと一緒にいるんでしょ!」 「うん、そうだったね。」 耀は少しはにかんだ。 それからふたりで笑いあった。顔が赤いのは寒さのせいだ。でもきっと、そんな言い訳は私たちを全く知らない人も信じないだろう。 それから望遠鏡を覗いたり、ベンチに隣り合って座って手を重ねて星を見たりもした。 他愛のない話をして、丘を下り、家の前で分かれた。それぞれのベットに入って眠った。 あすが来なくても、今日の凍てつくような冷たい気温と、胸の内から温まるように重なった温もりは絶対に忘れられないと思いながら。その温もりが新しい日常にはならなかったとしても。