短編小説みんなの答え:1

勇気に勝る恐怖。

「撃てーっ!」 まるで地獄を現世に持ってきたかのような光景だった。 共に笑った仲間は、今では顔色を変えて殺戮人形へと化してしまった。 教官の声が響く。 「進めぇーっ!」 仲間の亡骸に目もくれず、過去の友人は前進していく。 こんなことをして何が残る? 目の前に現れた戦車でさえ、戦士たちは乗り込んで乗っ取っていく。 ヒュンヒュンと高い音がして、ふと空を見上げると、大量のミサイルがこちら目掛けて突っ込んでくるのが目に入った。 「おい…味方がいるんだぞ…。」 まだ敵は退却していない。それでも僕らの足止めをしようと、仲間まで皆殺しにするのか!? これはもう戦いではない…。ただの殺戮だ。 激戦を繰り広げた敵兵は、ただ空を見上げて突っ立っている。 「退却ーーー!!!」 教官の声で我に帰る。今は引くべきだ。 「待ってくれぇー」 敵兵の虚しい声。しかし、あれは敵だ。 俺たちの仲間を殺したんだ。 塹壕に飛び入った瞬間。 背後から大勢の悲鳴と鈍い爆発音が響いた。 その中に知っている声はなかった。 敵はただ味方を殺しただけだった。なんて無様なんだ…。 ーパァァンー 突然塹壕の中で砲声がした。 「こいつっ!」 味方兵が違う軍服を着た兵士の死体を蹴っている。 「敵兵…か。」 敵の支援砲撃が続く中、飛び込んできた敵兵の遺体を安置所に運んだ。 その屍の中に、安らかな表情は見られなかった。 何処かのお偉いさんが始めた、戦争という殺戮運動の中で、これからそれほどの恐怖が生まれていくのだろうか。 しばらくして、弾が尽きたのか敵が突っ込んでくる。最後の足掻きというやつだろう。 「総員、進めー!」 仲間が前進する中で、足が動かなかった。 戦うことが勇気、だがこの状況の中で、恐怖にひれ伏すのも、ある意味勇気だろう。 ふと、自分に銃口を向ける兵士が見えて、甲高い音と共に目の前が真っ暗になった。 最後に思ったのは、『戦争を始めた奴が悪い』という、呪いの言葉だった。

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