キスをしたって幼馴染でしかいられない!!!
「好きだ、付き合ってほしい!」 誰もいない放課後の教室で俺、九条淳(くじょうあつし)は、幼馴染の道田茜(みちだあかね)に告白をした。 茜はおとなしめな性格で読書が好きな女の子。 優しい性格の持ち主で、淳はそんな茜を好きになった。 九年間隠し続けてきた気持ちを今、明かす。 茜は下を向いていてどんな表情をしているかはわからない。 淳は喉を鳴らすと茜の返事を待った。 「淳、気持ちは嬉しいよ、ありがとう。でも、ごめんね。私、今好きな人がいて、淳の気持ちには応えられない」 茜はそういうと、教室を出て行く。 一人その場に残された淳は黙ってしゃがみ込んだ。 翌日。 遅刻スレスレで登校した淳は、教室に入るなり自分の机に顔を置く。 窓の外を見ながら小さくため息をついた。 まさか、断られるなんて思ってもいなかった。 茜の好きな相手か、誰なんだろう。 淳はそのことばかり考え、事業に集中できなかった。 休み時間。 淳のところに友達の成瀬瑛人(なるせえいと)が寄ってくる。 「どうした、淳?」 瑛太は前の席に座りながら淳にそう問いかけた。 「実はさ、昨日茜に告白したんだ。そしたら断られちゃって。」 淳はため息をつくと顔を上げた。 「そっか、断られたか。で、それで諦めたのか?」 瑛太の言葉に淳は首を横に振る。 「ううん、全然。今でも付き合いたいとか思ってる」 淳は少し顔を赤くして答えた。 「そっか、なら攻めないと。」 「攻める…‥?」 瑛太の言葉に淳は首を横に傾げる。 「そう、攻めるんだ。そうしないと誰かにとられちゃうよ?」 瑛太がそう言ったのと同時に茜が昨日言った言葉を思い出した。 『私、今好きな人がいるの』 顔を少し赤らめて答える茜の姿を思い出して首を大きく左右にふった。 「そうだな。攻めないとダメだよな」 淳は席を立つと急いで教室を出て行った。 「あっ、おい!最後まで話を…‥!」 瑛太は淳が出て行ったドアを見ながらつぶやいた。 「お前の攻めるは危険だから教えようとしたのに」 その声は決して淳には届かなかった。 淳は茜のクラスに行くと近くにいた女子生徒に聞く。 「茜は?」 「ああ、茜ちゃんなら図書室だと思うよ。」 お礼を言うと急いで図書室に向かった。 「茜!」 図書室の戸を開けると茜がカウンターでお弁当を食べていた。 「茜、ひとりなのか?」 茜は少し驚きながらも頷く。 「今日、友達が休みだったから。で、何の用?」 茜は気まずいのか下を向いたままそう言った。 「あ、えっと、その。おれ、茜のことが好き。今日はその気持ちを行動で表そうと思って。」 淳はそういうと茜に近づき唇にキスをした。 「ん!?」 茜は驚いた様子で淳を押し倒す。 「なにすんの!?」 怒ったのか茜は立ち上がりお弁当箱を片付けると図書室を出て行った。 「あ……、やってしまった」 淳はキスをすれば意識してもらえると考えていた。 でも、逆に茜を怒らせてしまった。 「嫌われたな……」 淳の声が静まり返った教室に響いた。 放課後。 落ち込みながら門を出ようとしたところで誰かに呼び止められた。 「淳、今ちょっといい?」 そう言ったのは茜だ。 淳は戸惑いながらも頷いた。 「うん」 二人は図書室に行くとカウンターに座った。 「淳、あのね。私、好きな人がいるって言ったよね?なのに淳にキスされて酷く傷ついたの。だから淳にはちゃんと言っておこうと思って。」 茜は深呼吸をすると口を開いた。 「私が好きな相手はね、成瀬くんなの。」 その言葉に淳は頭が真っ白になった。 茜の好きな相手が自分の友達、瑛太だということに。 「瑛太……?」 「そう、だから淳の気持ちには答えられないから。二度とあんなことしないでね。」 茜はそれだけ伝えると図書室を後にした。 「まさか瑛太だったなんて…‥」 淳は愕然とした。 翌日の放課後。 屋上に来た茜に淳は謝った。 「急に呼び出してごめん。昨日、キスしてごめんな」 淳のその言葉に茜は答えた。 「うん、もういいよ。あっ、私ね、成瀬くんと付き合うことになったの。怒らないでね、成瀬くんを」 茜の言葉に少し辛くなったが頷いた。 「ああ。茜も瑛太も大切な人だから。それに、キスしても茜とは幼馴染でしかいられないってわかったし」 淳の言葉に茜は笑顔を見せた。 「ありがとう。私たちはずっと友達だよ!」 茜は手を出して握手を求める。 淳はその手を握った。 「おう!」 二人の笑顔が夕陽に照らされて一層輝く。 淳も茜も今までにない友情を感じた。