「大好き」と届けばいいのに
「お……おはよう、ございます」 「あ、うん、おはよ……」 こうやって私たちは、ぎこちない挨拶を交わす。毎朝、私がこりずに挨拶すると、松木もぎこちない笑みを返してくれるのだ。 君はとても友達が多い。だから君と話せるタイミングは少しだけだ。 「よ~! 松木! 昨日アニメイトでさぁ~!」 サエが、松木にどんっと体当たりした。私は無意識に目を逸らす。サエが松木と話しているところを見るのは、すごく嫌いだった。 「お~マジか! 面白~」 私の時よりもずっと楽しそうな松木を見て私はすごくもやもやする。サエはいつも、いろいろな男子にべたべたしている。しかも、松木には特にべたべたしている。私はそんなサエが嫌いだ。 そしてこんなことを思ってしまう私が嫌いだ。こんなことを思わせてくる松木も嫌いだ。松木のことはすごく好きだけど、松木に会いたいから学校に来ているけど、それでも恋が上手くいかないと卑屈になってしまう。 次の日も、私は松木に声を掛けた。「おはよう」 すると松木は気まずそうに目を逸らし、「どうすることにした?」と訊いた。 「え? 何のこと?」 私は首を傾げた。何のことだかわからない。だが声を掛けてくれたのが嬉しくて、声が少し明るくなる。 松木は悲しみと怒りが混ざったような、そんな顔をして言う。 「……何でもねぇよ。馬鹿」 ……え? 松木は、すたすたと歩いて行ってしまった。 何、嘘、何……? 翌日から松木は、私のことを無視し始めた。悲しくて悲しくて仕方がないけど、どうすることもできなかった。 そんなある日のことだった。 「松木卓也は今日は休みだ」 「え~、松木いないのかよ~」 残念そうな声があちこちで上がる。私もこっそりため息を吐く。心配だから、先生にわけを聞くことにした。 「先生……松木、どうしたんですか? 風邪ですが?」 「……雪谷、あとで先生たちで話し合った後、みんなに言うから。待っていてくれ」 「? わかりました」 何があったんだろうか? 次の日の朝。臨時朝会が開かれ、担任が目を潤ませながら言った。 「この学校で非常に残念なことが起きてしまいました。二年B組の松木が、交通事故で亡くなりました。松木くんのことを、忘れないであげて下さい。うぅっ」 目の前が真っ暗になった。思考が固まったまま、涙が溢れてきた。 優しくてかっこいい松木。頭がいい松木。運動ができる松木。 いつも笑顔で、太陽のようで、いつの間にか心を奪われていた。 そんな彼が。 死んだ。 「雪谷さん。松木について、話があるの。今日の放課後、屋上に来て」 そう言ったのは、サエだった。私はよくわからないまま頷いた。 「あのね。松木は、雪谷さんのことが好きだったの」 泣きながら、サエが言った。 「え?」 すごくすごく驚いた。そんなわけはないと思った。だってあの日から、ずっと無視されていたのだ。 「これ、あなたに」 サエは、手紙を取り出し、私に差し出した。見覚えのある字は、間違いなく彼のものだった。 「何これ……」 ●月●日 雪谷さんへ 僕はあなたのことが好きです。 付き合って欲しいと思っています。 あなたがいつも挨拶してくれて、嬉しかったです。 返事をください。 卓也 「嘘、でしょ」 彼の好きな人はサエではなかったのか。そして、なぜサエがこれを持っているのか。頭が混乱して、何も考えられなかった。 「あいつも臆病だったよね。この手紙、雪谷さんに渡して、なんて言うんだよ。困るよ。私、松木のことが好きだったんだよ。それがバレたくなくてさ、他の男子にもからんでたけど。あいつがあなたと付き合うなんて、死んでも嫌だったから。私はこれをずっと隠してた。ごめんね。それを私、ずっとフラれたと思って落ち込んで雪谷さんの事を無視してる松木を見ていると耐えられなくなってね、松木が死んだ日、話があるからってよび出したの。この手紙を返すと、あいつは怒ってどこかへ行った。多分、あなたの家。その途中で……あいつは死んだ」 すべてがつながった。よく考えたら、●月●日は無視され始めた前日だった。衝撃的な話だった。涙が止まらなかった。 「ごめん。松木を殺したのは私。全部私のせい。本当はあなたと松木が幸せになれるはずだったのに、私が全部邪魔したの。ごめん」 「サエ……もう、いいよ」 知らなかった。サエがこんな思いをしていたなんて。不思議と腹は立たなかった。 心の中で叫ぶ。 『私も大好きだよ。松木』 私たちが歩き出すことを、きっと松木は望んでいるだろう。 私はサエの手を取った。 いつか幸せを手にするその日まで。 サエと悲しみを乗り越えるしかない。 松木のことは一生忘れない。 あぁ。泣きながら思う。 「大好き」と届けばいいのに。
みんなの答え
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リアルで泣いた
どーも!最近…みたいな感じで、エピソード話しながら自己紹介してます流歌です! 切ないなぁほんとに泣きながら読んでた 才能がすごいね!小説家、なれるんじゃ? 最高の作品をありがとう!