私の親はバカだ。
私の親はバカだ。 何故高校に行かなかったのかと問えば、「バカだったからね」と。 中卒の母が、大嫌いだった。 私の親はバカだ。 何故宿題を手伝ってくれないのか問えば、「バカだからさ」と一言。 汗を流して鉛筆を握る私には目もくれず、永遠にパソコンをつつく母が大嫌いだった。 私の親はバカだ。 何故仕事に行かないのかと問えば、「バカでさ…」と余韻を残してポツリ。 靴はスニーカーだけ、買い物にしか出掛けない母が大嫌いだった。 私の親はバカだ。 なけなしの金で大学へ進学し、私が独り立ちする時。母はメソメソと泣いた。私の巣立った空虚な家で、独り寂しく毎日を過ごしていたのだろう。 私の親はバカだった。 もう二度と会えない。厳寒の日、母の楽観は運悪く発動した。戸締まりもロクにせず、悪巧みの男に襲われた。 私はバカだった。 中卒の少ない知識と、ほんの僅かな給料で、私を育ててくれた母。父とはいつの間にか離婚し、女手一つで大学まで進めたくれた。感謝の気持ちの一つや二つも伝えていない。最期を迎える前に会っておけば良かった。「ありがとう」のたった五文字を伝えるだけでもしておけば良かった。後悔しても、何一つ帰ってこない。 私はバカだった。 毎日寝る間を惜しんで、パソコンに向き合って仕事をしていたらしい。何の仕事かは知る由もないが、何千万円という大金を稼ぎ、それをほとんど私に充ててくれていた。 私の親はバカだった。 「中卒だから、仕事しかできない」 母が遺した日記。毎日、僅かに三行。それでも、ありったけの愛情が見えた。 私の親はバカだった。 私の親はバカだった。 私の親はバカだった。 いつの間にか、消えてしまった。
みんなの答え
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ハイレベルな小説ですね!
ども。燕さん。珊瑚礁がらすです! 題材は母の違法な営業でしょうか…… 母と子の関係は悲しくありつつも、 他にはないような儚さと温もりを 感じさせられました。 小説の中で何回も繰り返される 「私の親はバカだ」と 「私はバカだった」の言葉は バカな母の優しさに気づけなかった バカな自分を慰めながら 後悔している言葉のように思えて とても深い小説だと思いました。 すごい小説を、ありがとうございます! じゃ。