“愛してる”とか、馬鹿みたい。
「“愛してる”とか、馬鹿みたい。」 私は「愛してる」 とだけ書かれた恋人の 最後の手紙を閉じて、 一人の部屋で呟いた。 何が「愛してる」よ。 事故なんかで死んだくせしてさ。 私は息苦しい一人の部屋から ベランダへ行った。 ツンと鼻の奥を突き刺すような 冷たい風にあたりながら 彼のいる部屋では吸えなかった 煙草で一服する。 「あ、またタバコ吸ってる! 体に悪いからやめろって言っただろ?」 「っ……!」 彼の声が聞こえた気がして振り向いたけど、 やっぱり家には私以外の 誰もいない。 「……。」 半開きの目から零れ落ちる 涙を拭って、 私は机に置いた手紙を丸めて捨てた。 本当は、次会えた時に 彼に渡すはずだったんだ。 「私も愛してる」 と書いた手紙を。 なのに、渡す前に恋人を 失うとか。 伝えられずに離れ離れになるとかさ。 「ほんと、馬鹿みたいだよ。」