短編小説みんなの答え:2

手紙

長月ちさと様 拝啓  ふと外に出かけると、柔らかな春風を感じる季節となりました。いかがお過ごしですか。  さて、私が星宮中学校に転校してからの間、いろいろなところで支えてくださり、ありがとうございました。私はおかげさまで無事に第一志望の高校に入学することができました。部活動から日々の勉強までサポートしてくださった長月先輩には、心から感謝しています。  またいつか、お会いできる日を楽しみにしています。                  敬具   3月27日                 白野咲 ――私、白野咲は、長月先輩への手紙を、何度も書き直して書き直して、ようやく完成させた。書くか書かないか迷ったが、お世話になったのだから、書かないといけないと思った。  私は、窓の外を見た。なだらかな山、そのそばを流れる川、いつも買い物に行く商店街…私の目に映るのは、全ていつも通りの景色だ。この景色は、これまでも同じで、これからも変わらず、同じであり続けるのだろう。  でも、私たちはそうではない。時間が流れれば、年を取ったり、病気になったり、事故に遭ったりしていずれ消えてしまう。いつまでも変わらない人間なんてあり得ない。それは、私も、長月先輩も同じだ。  できれば、変わらないでほしかったな。  私は、そんなことを思いながら、長月先輩と一緒にいたときのことを思い出す。  いつも優しくて、私は先輩にずっと憧れてたな…  思い出した途端、目から涙がこぼれ落ちた。「もう会えない」と思うと、会えなくなる前に感謝を伝えておくべきだったという後悔が一気に溢れ出した。もう先輩は、2ヶ月前に、交通事故で…  その時、私が部活の大会に負けたとき、励ましてくれたときの先輩の言葉を思い出した。あの時先輩は、ただただ泣いている私に、こう言ったんだ。 「できたことを後悔しても駄目だよ。前を向いていかないと。」  私は、ハッとした。そうだ。前を向かないと。  私は深呼吸して、心を落ち着かせた。今は、この手紙をどうやって先輩に届けるか考えないと。部屋を見渡すと、棚に飾ってある先輩からの手紙が見つかった。「大会準優勝おめでとう」…負けた悔しさをバネに、二度目の大会で準優勝したときにもらった手紙だ。  私は、その手紙のそばに、自分で書いた手紙をそっと置いた。  先輩に、届いて欲しいな。  そんな願いを込めて。

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