短編小説みんなの答え:3

波打ち際のミカン箱

 生きることに一切の希望を抱けない中学三年生、こはく。  私は今日も退屈しのぎに"あそこ"へ向かう。  手入れされていない自転車のチェーンがうるさく音を立てる。  長い坂道を駆け上がるとそこには薄汚れた大きな灯台が聳え立っている。不気味なレンズが私を見下ろしていて、何度見ても少しゾッとしてしまう。けれど、そんな事はどうだっていい。だって━━━━━  灯台の裏側、人目に付かない所に仔猫の入ったミカン箱が置いてある。いつからそこにあるのかは定かではないが、私が灯台に通い始めた5月中旬にはすでにそこにいた。 「やっほー、来たよ。暑かったでしょう」  なんて言いながら私の給食の牛乳を皿に移す。  仔猫は無我夢中になって牛乳を飲む。  そういえば、仔猫に牛乳はダメとかなんとか聞いた事あったけどこの子は大丈夫なのだろうかとハッとする。与え初めたのはつい1日前からで、その前は、猫缶を与えていた。経済難なんて自分勝手な理由で牛乳に変更した。  嫌な予感というのはなぜか的中してしまうようで、仔猫は吐き戻してしまった。 「はやく病院連れていかなきゃ」  焦燥感に駆られる。 (私が自分勝手に牛乳を・・・)  ミカン箱ごと仔猫を前かごに乗せ、最寄りの動物病院に連れていく。  病院のお姉さんに仔猫を預ける。  苦しそうに踞る仔猫に申し訳なくなりただひたすらに謝った。  「ごめんね。ごめんね。本当にごめん。私がバカなばっかりに」  どのくらい時間が経ったのだろうか、しばらくして仔猫は元気になって戻ってきた。  まるで、夕飯を急かす子どものように私のそばに来てくれた。  仔猫は私を咎めなかった。その事が嬉しかった。  仔猫のモフモフな体が温かかった。 「最近、明るくなったな」  担任の先生が私に言う。 「そうですかね」 「それより進路志望調査の期限もう過ぎてるぞ」  そう言われても今生きてるのに精一杯なのに未来なんて。 ━━━━━━━━━━━未来? 「そうだ、決めた」  そう言って私は駆け出した。 「おーい、こはくさーん」  後ろから呼び止められた。  振り替えると仔猫を抱えた先輩がいた。 「はーい。早急に処置しまーす」  私は、灯台で出会った仔猫"みらい"に"今"をもらった。  私の今は、動物看護師。 -fin-

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