憂鬱な夜空の彗星
「──死にたいヤツに『生きろ』って言うほど、残酷なことねぇよな」 久しぶりに見た彼の笑顔は、どこか歪んで見えた。 ほんの数十分前。就寝する寸前の深夜のことだった。 スマホが聴き慣れた着信音を奏でる。スマホを開いて表示されたのは、「1:01」の時刻とメッセージアプリの通知。メッセージの送信者は、「憂」。親友の名だった。 「……?」こんな時間に何かあったのかと心配になりつつ、通知をタップする。メッセージは至って端的だった。 彗、今までありがと 大好きだ 一瞬、「愛の告白!?」と度肝を抜かれた感覚がしたが、すぐに違うなと悟った。 このメッセージの真意。俺の頭には、愛の告白とは真逆の可能性がぼんやり浮かんでいた。 「遺言──」 そうなってくると、憂が今から死を迎える、ということになる。 勘だった。 憂は本気だ。 寝巻き姿だった俺は寝ようとベッドに横たわっていた。しかしこれは寝ている場合ではないんじゃないか。 たちまち飛び起き、カーディガンだけ羽織って外へ飛び出した。両親とも既に爆睡していたらしく、気付かれることはなかった。 11月の肌寒い冷気が頭を一気に冷やす。途端に思考回路が働き出した。 ──憂は自殺を図っている? 心当たりはあった。憂には両親からの虐待、学校でのいじめと過酷で壮絶な過去がある。現在は続いていないが、何かが引き金になる可能性はなきにしもあらずだ。実際、何回か俺に「死にたい」と吐露する憂の顔は記憶に強く残っていた。 ──憂が最期の場所に選ぶとしたら…… これには見当もつかなかった。歩道橋か、川か、または自宅か。 行き先も未定なのに、足は忙しく動き続けていた。 息が切れて喉が燃える。苦しいが、憂の人生の苦悩と比べるとこんなことで疲れていられなかった。 がむしゃらに暗闇を走っていると、憂と一緒に通っている高校が見えた。 もしかして、屋上から飛び降りる──? 体は勝手に高校へ向かう。 やっと近づけたかと思えば、校門を覆う高いフェンスが見えた。まるで監獄のようだ。憂がこんなところで死のうとしていると考えると皮肉だった。 俺は無理やりフェンスをよじ登り、死ぬ気で飛び越えた。 校舎は当然、閑散としていた。激しく耳障りな自分の足音が虚しく響く。 「憂っっ」 屋上への階段を駆け上りつつ、無心で叫んだ。返答は期待していない。 4階建ての校舎を爆速でのぼりきり、屋上のドアを雑にぶっ飛ばした。鍵が空いているのを見る限り、誰かはいるはずだ。 「憂──っ!」 こけんばかりの勢いで飛び出す。 屋上の隅、フェンスの外側に探し人はいた。振り返ってこっちを凝視している。 「なんで」途端に目を見開く憂。 「勘だよ」理由が他になかった。 そして今に至る。 俺は必死に「死ぬな」「生きろ」の3文字だけを叫んでいた。 それを虚ろな目で見つめつつ無言だった憂が、少し経ち、やっと発した一言。 「死にたいヤツに『生きろ』って言うほど、残酷なことねぇよな」 え、と思わず零していた。 死にたい人に、生きる希望を訴える。 死にたいと思う人がいなくなるよう、生きるように言い聞かせる。 これこそが俺の中の"正義"だ。そのはずだった。 初めて気付かされた。 俺が「生きろ」と憂に言うのは、彼にしてみれば"残酷"なのだ。全く考えていなかった自分の能無し具合に笑えてくる。 これまでも、憂が「死にたい」といえば、俺は当然のように「生きろ」と励ました。 でも、何の励ましにもなっていなかったのだ。どころか、憂をさらに追い込むことになっていたのかもしれない。 「……ごめん」 残酷なことを言ったと自覚した今、申し訳なさが込み上げてきていた。 俺はもう、憂の自殺を止められないんじゃ──そんな予感と不安が過った。 気付けば言葉が口を突いて出ていた。 「わがままでも、憂にとって残酷で辛辣でも、俺はまだ一緒に生きたい」 共に死ぬなんて選択肢はない。 でも1人で死なせるという選択肢も論外。 なら………… 「憂──"俺のため"に生きてみないか?」 生きる希望を訴えるんじゃない。強要もしない。 「ただ、生きる希望を与えるのはいいだろ?」 憂が笑った。心からの綺麗な笑顔だった。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - Thank you for reading!長くてすんません 登場人物:時雨憂、晴野彗
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神すぎ
こんにちは!中2です! すごく素敵な物語!冗談抜きで一番好きな短編小説かもしれない。 彗くんと憂くんは、すごくいいお友達だね! 私も「死にたい」って思ったことあって、憂くんの言葉に共感できた。考えた主さん神! 彗くんも素直に謝って提案だしてるのいいと思う! まじで好き!主さんまた書いてもらえたら見ます!
かっ、感動…!
こんにちはっ! 乃亜だよ☆ 本題!! え、か、感動…!! やば、感動(?) 語彙力なくてごめんね!w 死にた人に向かって生きろはすっごい残酷なことだよね、それに気づいて主人公のために生きてほしいって言ったのはマジで感動した、! 自殺系の小説大好きだからまた書いてくれると嬉しい!! (* ̄▽ ̄)ノ~~ マタネー♪