天日の下で君とハグ
「ねぇ、公佳(きみか)上履き、いらないっしょ?」 「いる、いる…返して…」 「う~んじゃぁ、トイレ掃除したら返してあげる!ね!みんないい考えだと思わない?」 「うん!澄乃天才!」「え!いいじゃん!」 真美、凛花が次々に口ずさむ。 「ちゃぁ~んと、床まで磨き上げてね!みんなが使うんだから!」 「…」 「ちゃんと返事しなよ」 澄乃が低い声で言う。澄乃を怒らせてしまった。そう思うと、急いで笑顔を作り、「う、うん!」とうなずいた。 本当なら、誰もがやりたくないトイレ掃除。4人でやっと10分なのに、1人では何分なんだ? けど、上履きを返してもらえると思うと、少し気が軽くなる。 「終わった!」 奇麗になったトイレは、達成感と安堵感が満ち溢れていた。 トイレ掃除に使った汚水を捨てようとしたとき、 「ダメじゃん。」 え? 「それ、飲まなきゃ」 「そうだ!のめのめ(笑)」 「イッキ!イッキ!」 「無理…」 心配そうな顔をするお母さんの顔が浮かび上がる。 少しだけでいい、少しでいいから、 バケツに口を付け、口の中入れようとした瞬間、 「何してるんだ?」 やわらかい一瞬で声だけで虜になってしまいそうな男の人の声が聞こえた。 「あ、幸人くん!あ、あたしね!公佳と、あたしと、真美と、凛花でトイレ掃除、してたんだぁ」 「ふ~ん。トイレにいるのは、公佳だけ?お前ら、地味に廊下側にいんじゃん。」 「い、いや、そんなことないよぉ!ね~、公佳ぁ!」 え…?私?自分たちでトイレ掃除わたしに押し付けて自分もやったつもり?なにそれ、嘘つき。 「や、やって」 ギョロリ 澄乃の目がこちらに向くのを感じた。 「や、やった…」 「ね~!ほらぁ!いったでしょぉ!」 なにそれ、澄乃ズルい。 「公佳。嘘、つかなくていいんだぞ。こっちこい。」 幸人にグイと腕をつかまれて、昼休みの屋上に出る。 今は夏。太陽がじりじりとコンクリートの床を照り付けている。 「好きだ。」 え?何?え?え? 「好きだ。黙っててごめん。これからは、俺が、守るよ。愛してる。」 「私、わ、たしも」 幸人に体を抱き寄せられた。 少し湿った私の体は、幸人に吸い寄せられるように、ぽかぽかと体も心も温かくなった。 *end*