生きる理由をくれたあいつへ
僕は今、医者としていつも患者さんを診察し、支えている 最近は入院している小さな子供の担当をする事が増えてきた 子供たちは、病院で1日を過ごすという非日常的な生活が面白いらしく、病室の中を歩いてまわり、いつも楽しそうにしていた 昔の僕も入院した時、よくあいつと話したりして遊んだな あれ、そういえば…あいつの顔って どんな顔だったっけ 数十年前 「君もビョーキなの?」 突然話しかけられた事に驚いて返事が遅れた 「…あ、そうなんだよねー今の僕はぜんそくってビョーキらしくって」 話しかけてきた子はとても透き通って綺麗な声の持ち主だった それからしばらく彼とおしゃべりした 彼は『がん』というビョーキらしかった、色々と難しい事を言ってて良くわからないけど…大変そうだった 「まだ末期じゃなかったからよかった、手術をすれば治るかもしれないそうだし」って言っていた …末期ってなんだろう?聞いたら嫌がるかな 彼は外を見るのが好きだった いつも外を見ては「僕も外を走りたいな」とつぶやいていた 「絶対に走れるようになるよ!僕が保証する!」 僕がそう言うと、彼はポカンとした後にふっと笑って 「だったら絶対に走れるようになるな」と言った しばらくして彼はがんの手術をすることになった 手術の前日に、頑張ってねと応援した、成功したらまた遊ぼうねって約束もした そして手術の日 手術は…成功したそうだった 僕は嬉しくって急いで彼の病室に向かった おめでとうってまた遊べるねって言いに行こうとした… でも、走ってたら息が苦しくて…少し視界が歪んだ そしたら途中の階段で足を踏み外して…それで…それから… ――僕が目を覚ますと母さんは泣いて喜んだ、よかった…生きててよかった ―――手術が成功してよかった…って 僕ががんの手術して、リハビリして、退院するときに、あいつが階段から落ちて亡くなった事を知った いつか離れる事になるのはわかってた…けど、こんな別れ方あんまりじゃないか… (こんな思いをしたくて一緒にいたんじゃないんだぞ…) 後にも先にもあんなに泣いたのはあれ一回になると思う こんな苦しい思いは誰一人にだってしてほしくない、人の幸せは奪わせない 僕はその後勉強を頑張って医者になった 一人でも多くの命を守るために あいつが僕にそうしたように 誰かの生きる理由になれるように