短編小説みんなの答え:3

悲しい?

今日、妹が死んだ。 横断歩道を渡っていたら、大きなトラックに突っ込まれて、そのまま通行人に見つからずに息を引き取った。 妹が息を引き取ったと連絡があった時、母さんも父さんも驚いて泣いていた。 私も、それに合わせて泣いてみたが、涙が溢れているだけで表情は全く変わらなかった。 悲しくなかったし、驚いてもいなかったから。 悲しいはずなのに、なぜか悲しいとは思えなかった。 嬉しい時もあるし、楽しい時もあるけれど、悲しいとは思えなくて、その代わりに困惑していた。 だけど母さんも父さんも受け入れてくれて、決して咎めることはなかった。 だけど、母さんの態度が変わってきたのは、妹のお葬式が終わった頃だった。 仕方ないことといえば、仕方ないことだった。 「ねえ、なんで芹那が亡くなったのに悲しまないの?芹那のことそんなに嫌いなの?」 それは、ほとんど八つ当たりに近かった。 「ねえ、芹那のこと嫌いなの?」 母さんが怒ったように問うから、それに答える。 「嫌いじゃないし、好きだったよ。」 それはいつも通りくだらない話をするような口調で、震えても掠れてもいなかった。 そんな私に母さんはますます眉を顰める。 「そんな薄っぺらい声じゃ、嘘ついてるのバレバレだから。ほんと、どうしてこうなっちゃったの?芹那はあんなに表情豊かで、可愛かったのに……」 母さんはため息をつく。 そして、手で膝をさすり、 「栞じゃなくて、芹那に生き残ってほしかった……」 と呟いた。 消えそうな小さい声で、少し震えていた。 母さんが涙で真っ黒なスカートを濡らす。 涙がスカートに落ちるたびに、黒はどんどん濃くなっていって、なんだか飲み込まれそうになる。 自分も涙をこぼしてみる。 だけど、やっぱり悲しいとは思えない。 昔は泣き虫だった。 転んだだけで泣いて、教科書を家に忘れただけで泣いて、問題をみんなの前で間違えただけで泣いて── 泣くのを、ずっとやめたかった。 悲しいと思えないようにしたかった。 あの日の夜を思い出す。 カーテンがひらりと動いたと思ったら、そこから深く帽子を被った男の子が現れた。 唯一見えている口元をにっとあげて、 『僕は死神。誰でも一人殺してあげる。ただし、その代わりに感情か五感、どちらかのうちのひとつを失う。どうする?誰か殺したい?選ばなくてもいいけど』 と言った。 迷わず、妹の名前を言った。 悲しいという感情を無くして、妹を殺してくださいとお願いした。 母さんにずっと贔屓される妹が憎らしかったから。 それだけでずっと泣いている自分が嫌いだったから。 死神は、満足そうに深く頷いてから、窓から出ていった。 どうせ母さんに怒られるなら、失敗だったなぁ、と考える。 まあ、どうせ妹には死んでほしかったからどうでもいいのだけれど

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