短編小説みんなの答え:1

世界一幸せな国と秘密の扉。

虫の音が囁く夜の中、 私は灯ひとつの大きな部屋で 本のページをめくっていた。 私は、この国の王女という役目を 引き継ぐために歴史のことを 勉強しているのだ。 だけどこの城には だらだらとした貴族ばかり。 なんせこの国は世界一平和な 国だと知られるほど、 歴史に事件の一つもないのだ。 だから貴族は国のことを知ろうとも しないし、知る必要だってない。 だけど私は、 「もっとこの国に幸せになってほしい。」 そう、城の窓から街を眺めて呟いた。 でも、そろそろ寝なければ。 読み終わった本を本棚に戻そうとした時、 本棚の下に、何やら光るものが見えた。 「何かしら、これ…」 それはドアノブのようなもので、 錆ひとつなく、誰かが使っているようには 見えなかった。 私は不思議と、少しの恐怖が ありつつ、本棚を避けてそのドアノブを握った。 ドアを開けると、そこは広く、 ジメジメとしていた。 誰もつけることができないはずなのに 消えることのないように 燃え続けるロウソクを たどって、私は中の階段を降り、 一つの牢獄を見つけた。 こんなところ、みたこともない。 「……あんた、誰だい。」 しわがれた声が響いて、 私は声も出せずに驚く。 「私は……この国の王女です。 貴方こそ、なぜこんなところに?」 私は声を落ち着かせてそう聞いた。 牢屋の闇から顔を出したのは、 一人の老婆。なんとも、気味が悪かった。 「ははは…そりゃあ、 知らないのも無理はないね、王女さん。 私は古い歴史から残る魔女だよ。 今は、ここで閉じ込められてんのさ。」 「魔女…?そんなの、歴史の本の どこにも載っていませんでしたが…」 私は自分とは無縁とも言える「魔女」 という単語を、その魔女と 名乗る老婆に聞き返した。 「そうさ。歴史から消されたんだからね。」 「…いえ、この国は平和です。 事件の一つもない。 当然、魔女なんているはずもないですよ。」 「じゃああんたは、その平和は誰も 犠牲にならずにできているとでも 思っているのかい?それに、 この平和な国で魔女がいるなんて言って、 受け入れる人はいないだろう。」 「……それは…」 私は何も言い返せなかった。 だって、この魔女の言う通り、 「魔女」を受け入れようとしなかったのは 私だったからだ。 「私は、貴方のことを信じます。 魔女についての話、詳しく聞かせてくれませんか?」 そう言うと、魔女は 魔法で若い頃の記憶を私の頭の中で 見せてくれた。 そして私は、決心した。 この国は変わらなければいけないと。 魔女と出会った次の朝、 私は街に出て、魔女の話をした。 「信じて!私を、信じてください。 過去を受け入れるのは、前に進むことです!」 私は必死に国民に呼びかける。 だが、 「黙れ小娘!王女だからと言って調子に乗るなよ!」 と言う人たちを一人で説得することは、 とてもできるはずがなかった。 私は国民に「嘘つき」 と責められ、とうとう疲れ果て、 倒れた時。 一人の女性が、私の手を取った。 「大丈夫ですよ。私は、貴方の話を信じます。 なんせ、この国を愛する貴方が、 そんな嘘をつくわけがないのですから。」 「お、俺も!」 「みんな、この国を前に進めようぜ! このままだったら、俺たちは本当に 幸せにはなれねぇよ!」 そんな声に、私は涙を拭って立ち上がった。 そして、今があると言うわけだ。 「女王様、その話本当!?」 「ああ、本当だよ。」 年をとり、しわくちゃになった私は、 昔のことを子供達に話す。 「そうなんだね。」 魔女の子供が言う。 今では、魔女も人間も自由に暮らせるのだ。 みんなしてはしゃぐ子供達を 見て、私はこの国の幸せを感じている。 この子たちが、 この幸せを受け継いでくれますように。 「じゃあ、任せたわよ。」 私は静かに眠りについた。 【end】

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