殺し屋の初恋
殺し屋は、恋をしない。 恋愛をしない。 恋愛ができない。 だけど、私は恋をした。 「お久しぶりです」 そう言って部屋に入ってきたのは、真香(まどか)さん。 ここは“殺し屋の世界”と呼ばれる、優秀な殺し屋が集結する場所。 私、七帆(ななほ)も殺し屋の1人。 「真香さん、お久しぶりです。最近は来てなかったですよね?」と私が問うと、 真香さんは「ちょっと風邪をこじらせちゃっって。ごめんねー」と苦笑した。 めっちゃ優しそうな雰囲気だけど、実はめちゃくちゃ怖くて優秀な殺し屋だ。 「さて、今日の仕事を与えよう」 ボス的な存在の『黒蛇』と呼ばれる人が言う。 私たちは、一斉に振り向いた。 黒蛇は言った。 「今日は、ある学校にしのびこんで、そこにいる生徒・教師を殺してこい」 黒蛇は、私と真香さんの方に体を向ける。 「今日は、真香と七帆に行ってもらおう」と言った。 「「了解」」 目的の学校にしのびこみ、次々と教師と生徒を殺す。 真香さんは手慣れた手つきで、どんどんと進んでいく。 私も進みかけた。その時―― 「か、かっこいい・・・」 私が思わず口にする。 そこには、1人の男子生徒が真っ青になりながら、教室の隅で立っている。 (これが、恋なのかな・・・) そう思って、私は彼にこういう。 「私は殺し屋で、この学校にいる人を殺しに来たんだ」 「知ってる。俺も殺すんだろ」 彼は震えた声で言い返してきた。でも私は首を振る。 「ううん。私は君に恋をしたみたいです。君のことは殺せない。好きです」 そう言ったとき「七帆!!」と言う声が後ろから聞こえた。 声の主は、真香さんだった。 「真香さん!?」と私。 「七帆、殺し屋の世界のルールは、『殺すことに関係ないことはしない』ことよ。恋愛なんてしたら、ルール違反よ。ルールを破ったら殺されるのよ、忘れたの!?」 真香さんが叫ぶ。 「いいよ、殺されても。私は彼が好き。この不思議な感覚は初めて・・・」 私が言い終わらないうちに、真香さんは私のもとに駆け寄ってきた。 そして――。 ザクッ・・・・・ 私の恋は、一瞬にして終わった。