記念日の日に
初の恋愛小説投稿です。 「しろくん?ごめんね、待たせたよねっ」 わたし、神楽寧々は駅前のベンチに向かって小走りに走った。 ベンチには、思わず見惚れちゃいそうなほどのイケメンが座っている。 ちなみに、わたしの初カレシ。 「全然待ってないよ。今来たし」 白い息を吐きながら、しろくんがそう言った。そして、お日様のような笑みを浮かべる。 しろくんは高校の王子様ってくらいのイケメン。 スポーツも勉強もできる文武両道。誰にでも優しいし、クラスの女子もキャーキャー言っていた。 そんな「アコガレ」だった人がわたしのカレシ。今でもドキドキする。 付き合って一年が経った。そろそろ二年が経とうとしている。 「で、話があるんだよね、僕に」 わたしもベンチに座ったら、すぐにそう聞かれた。わたしはギクリ、顔をこわばらせる。 ギクリってなによ。わたしがしろくんを呼び出したんだよ。 ある“話”があるから―。 「急に呼び出して、ごめんねっ。ちょっと、大事な話があって…」 へへ、と笑うと、しろくんは真剣な顔になった。 「大事な話、ってなに?」 …まぁ、そうなるよね。 でも、黙ったところでどうにもならない。ただ、モヤモヤするだけだ。 「あのね、しろくん。わたし、わたしねっ」 カクゴを決めて、わたしはしろくんに向きなおった。 「えっと…お父さんの仕事の関係で、その…引っ越すことに、なったんだ」 お父さんの仕事の都合で、東京から千葉に引っ越すことになって…。 それを知ったのは一週間前。もっと早く言えたのに、どうしてこんなに先延ばししちゃったんだろう。 チラリ、しろくんを見ると、一瞬ボーッとしていて、ハッと我に返ったみたいだった。 「引っ越す?どこに?」 「ち、千葉だよ。あ、会おうと思えば会えるからっ。明日まで、わたし、いる。…それだけだから」 本当は、言いたいことたくさんあった。でも、いざ言ったら胸がいっぱいになって、冷たくなってしまった。 わたしのバカ。バカバカバカ。もっと言いたいこと、たくさんあったのに! 明日で、もうしろくんとさよならなのに。 後悔したけど、もう遅い。立ち上がって、くるり、しろくんに背を向けた。 ぽろり、涙がこぼれた。決まった未来は、もうなんにもできないのに。 「ごめんね!」 そう言うと、わたしは走り出した。 と、わたしの腕を、しろくんが強引につかんで引っ張る! 「え…」 振り返ると、しろくんの不機嫌な顔があった。 ドキン!と心臓がはねる。 次の瞬間には、抱きしめられていた。 付き合って抱きしめられるのは初めてで、ドキドキしてしまう。 「し、しろくんっ?」 「なんで早く言ってくれなかったんだよ」 普段の彼とは違う、ちょっと不良っぽくなった声と口調。お、怒ってる…? 「今日、記念日じゃん」 あ……。 わたし、全然考えてなかった。 そうだ、今日、記念日だ。わたしたちが、付き合い始めた日。 二年が経ったんだ。 「ごめん…ごめんね、しろくん」 ただ謝ることしかできない。そんな自分が惨めに思えた。 「別れ話じゃないんだよね?」 しろくんにそう聞かれて、わたしは首がもげるってくらい首をタテに振った。 「そんなこと!別れ話なんかじゃないよっ」 「じゃあ、遠距離恋愛だね」 しろくんは体をゆっくり離した。 そして、ちょっと赤くなった目元で、へにゃ、と太陽の笑顔で笑ってくれた。 しろくんがそばにいなくても、大丈夫。 会おうと思えば、いつでも会える。 それまで―遠距離恋愛だ!