ああ、やっと、これで…
生きてるだけでなんでもできる、なんて言うけれど。 そんなのただの綺麗事で。 生きてるから辛いことがあるのに、私たちはなんで生きているのだろう。 そんな私の考え方。 〝死にたい〟を〝生きたい〟に変えてくれた人。 それが私の大好きな人、凛(りん)だ。 学校に着いて、ため息を吐く。 下駄箱から悪口でいっぱいの上履きを取り出し、泥まみれの外履きと履き替える。 重い足を引きずりながら教室へと向かう。 教室の前で深呼吸。 〝私なら大丈夫〟と言い聞かせ、ドアを恐る恐る開ける。 クラスのみんなの冷ややかな視線が胸に凍りつく。 そして私は机へと向かう。 〝バカ〟だとか〝死ね〟だとか真っ黒なマジックペンで書かれた机にビリビリに破かれたノートや教科書。 張り裂けそうな心を落ち着かせ、軽くため息を吐く。 あちらこちらでクスクスと笑い声が聞こえる。 こんなの日常茶飯事で、私にとっても、みんなにとっても当たり前の光景。 いつも通りの日常だった…はずなのに。 「こんなのもうやめようよ」 ひとりの女の子が声を張り上げた。 「みんな馬鹿じゃないの?桜ちゃんいじめて、見て見ぬ振りして、何笑ってんの?何楽しんでんの?いじめてるお前らの方がよっぽど馬鹿だよ!」 初めてみた。凛ちゃんがこんなに怒ってるところ。 その日は少しだけ、いじめが収まったような気がした。 「いいのに、助けなくたって。今度は凛ちゃんがいじめられるじゃん」 夕焼け色に染まった公園で、私と凛ちゃんはブランコを漕いでいた。 「見てられなかった。桜ちゃん、泣きそうだった」 そう言う凛ちゃんも泣きそうで、悔しそうに俯いていた。 「すぐ助けられなくてごめ…」 「嬉しかった」 凛ちゃんの声を遮って呟いた。 「嬉しかったんだ、私。今まで助けてくれた人なんていなかった。ありがとう」 2人の笑顔が夕焼けに照らされて。 それからはいじめられても平気になった。 だって私には凛ちゃんがいるから。 凛ちゃんが来なくなった。 ずっと、ずっと来ていない。 暗い顔をした先生が教卓に立って、「鈴木凛さんが亡くなった」 と私たちに伝えた。ざわめく教室、絶望する私。 少しの幸せを共有していた人が突然亡くなった。 それから1週間は外にも出られず、ずっと部屋にいた。 凛が亡くなって1ヶ月。 もう限界。私の考えを、生き方を、変えてくれた君に今から会いに生きます。 車通りの多い交差点に勢いよく飛び出して。 キキッッー ドンッ ああ、やっと、これで。