短編小説みんなの答え:3

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「……なにしてんの」 微かに残る唇のぬくもりと火照る頬を撫でる風。 「どう?ドキドキした?」 「べつに」 「はは、つれないなあ」 散歩に行こう、という彼からのメッセージで急いでダッフルコートを身に纏い、一時間前に見たニュースでは寒さが激しいと教えてくれていたのにも関わらず、迷わず家を出た私は自分でも変人だと思う。 それくらい、彼に想いを寄せている、なんてことは認めないくせに。 ベンチにひとり分開けて座る私たちは、先ほど彼が言っていた「ドキドキ」について語らっていた。 ー「ね、『ドキドキ』って感じたことある?」 「なに急に」 「だから、したことある?」 「…ちょっとだけなら、」 嘘。ずっと、きみにドキドキしてる。 しかしこれが災いを招いた。 「ドキドキなかったならもっかいしようよ」 「無理。私たち付き合ってないんだから一回でもダメなの」 「え?そうなの?」 「はぁ。…この鈍感男」 なるべく彼に聞こえないようにほざいたつもりなのに、彼はムッとした表情をしていた。 「しよ」 「は?だから無理だっ…」 「ふっ、恋は侮れないね?」 悪戯っ子のような笑みを浮かべた彼。 月に照らされる彼の瞳に惹かれた私は本当に愚か者だ。 「……。気づいてたんだ」 「うん、ずっと前からね?」 「はずかしい」 顔を手で覆ってみせると、彼の大きなごつごつとした手が私の頭を撫でる。 あれ、なんでだろう。 どんなに柔らかい風より、家族の手のひらよりかも、彼の手がいちばん心地よい。 優しくて、もっと撫でてって思う。 「かわいい」 指の隙間から見えた彼の愛おしそうな顔。 ああ、もしかしたら彼も。 ーー期待した直後、スマホのアラームで起き上がる。 「…あの夢はいったい何だったんだろう」 あのおとこのひと、誰だろう。 あの公園は、近所になかったはず。 あのシーンのおわりは、もう見れない。

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