私の耳は、治るのか。
「突発性難聴ですね」 突発性難聴。突然発生する難聴。科学的な原因は分からない。 確かに前々から違和感はあったんだ。 けど…。 もう声も、音楽も、聞けないんだ…。 「将来の夢は声優です!声優の〇〇さんのような声優になりたいです!」 そう宣言した、中学校入学当初。今は中2の冬。 思い出す。 そして思い出すと泣けてくる。 これも辛いけど、きっと、私の周りの人達は、もっと辛いだろう。 『おはよう!』 私:『おはよう』 付き合って1ヶ月の彼氏にも、手話を使わせてる。 手話を使わせてるのは、彼氏だけじゃない。 家族も、友達も、先生にも。 今では、ほとんどの会話が手話。この人達みんな、頑張って学んでくれたんだ。 私一人のために。 〈私、酷いなぁ。〉 そう思うこともある。 こんな感じなのが、私の日常だ。 けど、ある日、非日常なことが起きた。 彼氏と将来の夢について話した。 それだけではある。けど…。 『俺、声優になろうかな!』 こう言われたんだ。 私:『なんで!?』 『お前が出来なくなったから』 私:『だからって、…。』 『俺が目指すことないって?』 私:『…うん。私の夢だっただけだもん。』 『そうかぁ…。じゃあ、お前の耳、治して!』 治して。か…。 私:『3分の1しか治らないんだよ!?お医者さんにも、治らないだろうって言われたし…』 『治らないだろうって言われたけど治るっていうのは何パーあるか分かんねぇけど、可能性はあるんだから。諦めることないだろ。』 何も言えなかった。 可能性を信じる彼とその背景が、あまりにも、輝いて見えたから。 まるでドラマのポスターかのように。 「そうだよね」 久しぶりに、声を使った。難聴の重度が高いから、ちゃんと言えてたか分からないけど。 けど、彼は笑ってるような、泣きそうなような、ほっとしたような。 そんな表情で聞いていた。 “私の耳は、治るのか。”