私の得意なピアノ
私の得意な、ピアノ。 ピアノが得意なのは、あの人もだ。 ─────〈奈々視点〉───── 私は、ピアノが得意。 けど、同じクラスの、美桜ちゃんも、ピアノが得意なんだって。 ある日、私は美桜ちゃんを誘って音楽室に行った。 美桜ちゃんと曲を聞き合いたかったから。 そういうのが初めてで、できると思うと嬉しかった。 そうして聞き合いは始まった。 私は、美桜ちゃんが弾いてた曲が、とても良い曲だなと思った。 だから、家に帰って、その曲を練習したんだ。 聞いてるのも気持ち良かったけど、弾いてるのも気持ち良い。 どうしても、美桜ちゃんの表現力には届かないけど、それでも良かった。 次の日、この曲を弾いた。 そして私は、「やっぱ美桜ちゃんの表現力には届かない!凄いね!美桜ちゃん!」と言った。 はっきり言うと、基本的なスキルは私の方が上だった。 そしたら、美桜ちゃんは、微妙な顔で、「ありがとう」と言った。 それから、音楽室に誘っても、来てもらえなくなっちゃったんだ。 私は反省した。 良い曲だからと人が弾いてた曲を弾くのは良くないんだな。と。 美桜ちゃんは、そういう風に捉えちゃったんだな。と。 悪いのは、私だ。 ────〈美桜視点〉───── 私は、ピアノが得意。 同じクラスの奈々ちゃんがもピアノが得意なのは知っていた。 そしてその奈々ちゃんに、音楽室でピアノの聞き合いをしようと誘われた。 正直よくわからなかったけど、それは楽しいものだろうと行った。 そして私は大好きな曲を弾いた。 そしたら奈々ちゃんは目を輝かせていて、この曲の良さを伝えられて良かったと、聞き合いも良いな、と私は思った。 次の日、奈々ちゃんが私の大好きな曲を弾いた。 正直ショックだった。 私が練習してきた曲を弾かれた。 好きなものは一人占めしたい。 そう思ってしまった。 奈々ちゃんが言っている通り、私の方が表現力はあると思う。 なのに、私はもう誘われても拒否することしかできなくなってしまった。 聞いた時、私の能力をバカにされた気分だった。 奈々ちゃんの方が、基本的なスキルができていたから。 奈々ちゃんはそんなつもりで弾いたわけではないことを、私は知っていた。 悪いのは、私だ。 ────────────── ある日私は、決意を決めて、謝ろうと思った。 奈々:美桜ちゃんの好きな曲を弾いたことを。 美桜:一人占めしようとしたことを。 「…あのさ、」 声は重なっていた。 「…あ、先どうぞ。」 「…あ、ありがとう。 ごめんね!私、あの曲が好きだからって、一人占めしようとしてた…。」 「え?悪いのは私だよ。私が弾かなきゃ良かったの。私が弾いたから、能力の差を美桜ちゃんが意識しちゃって…。…そうでしょ?」 「う…ん…。まあ、感じてないと言うと嘘になる。でも、実際のところ、上手いのは奈々ちゃんの方だし。」 「何言ってるの?私には、基本的なスキルを磨いていく良さがあると思う。けど、美桜ちゃんにだって表現力って言う良さがあるんだよ。気にするんじゃなく、自慢できるじゃん!」 「…うん!そうだね!」 このことがあったことで、お互いのメリットを知れた気がする。