喪失
2月。 無機質な部屋の窓から見えたのは、鮮やかな晴天だった。 朝のひんやりとした空気。 これほど物が少ない部屋なら尚更だ。 青く澄んだ空は、見ているだけで心が浄化された。 それと同時に、あまりに綺麗な景色を前に自分の醜い姿が露になっていくようで、後ろめたい気持ちになった。 暫くすると飽きてきて、先程起きたばかりだと言うのに再び毛布にくるまる。 鳴り止む事の無い機械音。 綺麗で悲しい、朝だった。 8月。 静かな波の音が聞こえる。 夕日が沈みつつある海辺で、独り立っていた。 「、、、お兄ちゃん。」 6ヶ月前のあの日、あの時の景色を私は忘れない。 いや、忘れられない。 下を向くと、水面には私の顔。 まるで生気がない、恐ろしい顔をしている。 ふと、遠い日の思い出が木霊した。 「ナズナ!こっちこいよ!」 「ま、待ってよお兄ちゃ、、、痛っ」 「うおっ、、、ったく、しょーがねえなあ。ほい」 「うう、、、お兄ちゃ~ん」 「もう泣くな。兄ちゃんが守ってやるから。」 「、、、はは。」 嘘つき。 ずっと一緒って、約束してたのに。 いいや、違うよね。ごめんね。 私が言いたかったのは______,,, 「守ってくれて、ありがとう。」 むし暑い海辺には、波の音だけが響いていた。