カイロって温かいだけですか?
はぁー、さむっー。1人でぼそっと呟いてみた。やっと冬が来たなー。少し早歩きになりながらいつもの通学路の線路沿いを歩いている。 わたしは中学2年生、竹中玲香(たけなかれいか)。いつも何故だか分からないが家を早く出てしまう。学校に早く行ったって誰も教室にいないしやることがないのに。なぜだろう。でも、最近その理由が自分の心の中では答えが導いている。多分だけど。私は恋をした。ある高校生に。線路沿いのあるマンションの一角から自転車で通学している高校生。名前も年齢もどこの学校かもわからない高校生に、恋をした。自転車に乗って片手をハンドルから離してポケットに手を入れながらスイスイとわたしの先を行く彼の姿には言葉も出ない。今日はマンションに近づくにつれ少し歩く速度が落ちた。なぜだろう。反射的にだ。マンションの方についつい視線を向けてしまった。視線を感じた。彼がスーッと自転車で目の前を通った。あぁー、カッコいい…。良い1日の始まりだ。一瞬の出来事なのにまるで宝くじに当たったのかのような持続性があり、幸せに包み込まれるような…。太陽の光に照らされて…。 今日は時間に余裕があった。朝、いつもより早く起きて勉強してたから、しなきゃやばいからだ。期末考査1日目。テスト、受けるだけ、大丈夫!と自分に言い聞かせて家を出た。暗記科目、多いなー。技術のまとめノートを手にし、家を出た。赤シートで再確認!多分ばっちしだろう!そんなこんなでマンションを通り過ぎ彼が目の前を通ったのかもわからず学校に着いていた。何も気づかずに…。テストに集中、ファイト、自分!と言い聞かせた。テスト明けにでも何か進展があればなぁー… うわぁーー、行ってきまぁすぅー!テスト期間が終わり気が抜けていた。寒いから布団出たくないなと思っていたら気づいたらこんな時間!で。髪をキュッキュと結びおにぎりを半分だけ食べて急いで家を出た。今年1番の寒気に覆われるでしょう、そんなことニュースで言ってたっけな。はぁー、さむっー、、こんな時でも彼に会いたい気持ちは譲れないんだ…自分でもハッと気付かされた。よっぽど好きなんだと、気づいたら走っていて。マンションに近づくのつれそろそろ来るんだろうと。いつもより彼はゆっくりな速度だった。寒いしやる気起きないよね…ふとそう考えていた。彼の姿を目でバレないようにそっと追っていたらポケットからカイロが落ちた。拾ったほいが良いの?と思うはずが、すでに手の上にカイロがあった。彼も気付いたのか自転車のブレーキをギィーと鳴らし止まっていた。落ちました、どうぞ。っと言って渡そうとしたら「君への温もり、少しでも分けられるかな?」と言って去っていた。彼と目が合わせていた、いや自然と合っていた。まるで時間が止まり2人だけに与えられた時間のように過ぎていった。えへぇ?変な声が出ていた。なんで?えへぇ?えっ?と。学校に着き教室でカイロをギューと握りしめた。よく見ると 「いつもこっち見てくるから照れます。今持っているカイロより断然、顔が真っ赤になっちゃうから…」と書かれていた。カイロのおかげ、うんん、違う、彼のおかげで今年最高気温くらいの体温になった。 誰にも言わなかった。制服のポケットの大事にカイロをしまい、家に帰ってそっと机の引き出しにしまった。リビングへ行き小分けになっているカイロを取り出しビニールに 「好きです。」と書いて渡そう、そう決心したのだ。