私だけの桜ちゃん
「ただいまー!」 勢いよく玄関のドアを開けて二階の自室へ駆け上がる コラッ優里手を洗いなさい!と怒るママの声が聞こえる 「今はそれどころじゃないのー、今から桜ちゃんの家に遊びに行くんだから!」 そう言いながらリュックにゲーム機とお菓子を詰め込んだ 行ってきまーす、そう言って同じように勢いよく玄関のドアを開けて外に飛び出す さっきキッチンからした匂い…きっとカレーだ!やったね! そう思いながら交差点を曲がって走り続けた、数分して桜ちゃんの家についた 「いらっしゃい!やっときたね」 そう言って私を迎えるのは桜ちゃん、クラスでいじめられてる私とは真逆で可愛くて明るくてクラスの人気者 そして桜ちゃんは私と幼なじみでずっと仲良し、いわゆる大親友だ クラスが変わっちゃった今も仲良くしてくれてる 私はそんな桜ちゃんの幼なじみであるという特別を嬉しく思う (これからもずっとずっと一緒にいたいなあ) 桜ちゃんの家で過ごすに2時間はあっという間だった、帰る時に桜ちゃんのお母さんから食べて帰る?と言われたが今日の晩御飯は大好きなカレーなので断った 今日も楽しかったなー、カレーも楽しみー! 「ただい…――ん?」 違和感を感じた、いつもと変わらない家の中、だけどなにか違った 恐る恐るリビングに近寄ると、ママとパパの声がした 「――やっぱり変よ桜ちゃんって…」 (――え?) 私は困惑した ―――――嘘だ…ママ…なんでそんな事 「なあ、調べてみたんだがやっぱり"これ"じゃないか?」 これって言い方しないでよ…パパ なんで…なんで――! 悔しくて悲しくて裏切られたような気がしてリビングのドアを思い切り開けた 「桜ちゃんが変って何よ!桜ちゃんは…!」 パパはとても慌ててた、ママは目を見開いて私を凝視してた 「落ち着け!違うんだ!だから一旦落ち着いてくれ!」 パパの言うことなんて知らない!ママもなんであんな事言うの そう思い、ママの方を見る ―――泣いていた その目は恐ろしく暗くて、私の顔を写してた ママのその目を見た瞬間、怒りも悲しみも無くなった、ただ私の中にからっぽな感情だけが残った 立ち止まってママを見つめる私の肩を叩いてパパは言った 「おかしいのは桜ちゃんとやらじゃない、優里…お前なんだ…」 パパも泣いた、静かなリビングに二人の泣き声だけが響いた 2日後、私はパパとママと一緒に病院に行った 診断された結果、私は無意識に『イマジナリーフレンド』という物を頭の中で作り出していたらしい 頭の中で架空の友達を作ってしまう、そしてその架空の友達の事をイマジナリーフレンドと言うらしい そんな架空の桜ちゃんを作ってしまったのは、私が追い詰められたからだ、どうしようもないくらいに苦しくて痛くてでも目を逸らす事なんてできなくて、それらへの逃げ道として私の桜ちゃんを生み出してしまった… 結果として、パパとママを悲しませてしまったけど、もう悲しませたくない、あんな暗い目にさせたくない 私はもう逃げない、イジメの事を言ったらショックかもしれないけど、その後に笑える未来が待ってるなら平気 桜ちゃんにさよならして、自分の未来を生きていこう 診断書を握りしめて空を見上げた いつもよりもずっと蒼く見えた