短編小説みんなの答え:5

ミス

「わ、私が、ミスを、する、なんて・・・。」 少し前のこと。 私、柏木 柏(かしわぎ はく)は、見た人の人生を、ハッピーエンドに変えるのが仕事。 位の低い天使みたいなもので、 飢えて倒れそうな人の行く先に食べ物を置いたり、少しのきっかけを作って、九死に一生を得させる仕事。 ミスは許されない。生死にかかわる仕事だから。 ある日、柏はある少年に目をとめた。 貧乏そうな格好で、大きな帽子をかぶっていて、犬を連れている。 雪の降る中、とぼとぼと泣きながら歩いていた。 柏は自分の能力でその少年の事を知った。 どうやら、親がいなくて、引き取ってくれた人もいたが、その人もいなくなってしまった。 そして、貧乏だからと一部の人から嫌われ、放火の犯人を決めつけられた。 その少年を信用する人はいなくなり、物も売れず、貧乏になっていく。 大好きな絵に賭けたが、それも駄目で絶望していた、といったところだ。 柏はその近くに落ちていたお金を拾った。 そして、その少年の行く先に置いた。 「これで男の子がお金を拾えば、十分な暮らしができるはず・・・」 少年は相当貧乏だから、お金を見ればとっさに持ち帰るに違いない、と考えたのだ。 少年は、柏の思った通りお金を拾った。 でも、少年の絶望の表情は変わらない。 そのまま、お金を持ってとぼとぼ歩いていく。 しかし、少年は青い屋根の家に行った。 そこは少年の家ではない。 「あの、これ、ノアさんのではないでしょうか。」 そう言って、少年はお金をノアのおばさんに返した。 柏はここで1つ間違った。 ノアは少年を放火の犯人と決めつけた人物であり、返すなんて思いもしなかったのだ。 ノアのおばさんは「ご飯をごちそうするよ」と少年に聞いた。 これも柏の作戦だ。 しかし、少年は、「遠慮します」と言ってまた雪の中をとぼとぼ歩き始めた。 そのままふらつき、少年は倒れた。 犬の方もぐったりしている。 そのまま、少年と犬は動かなくなってしまった。 「・・・。」 柏はその時、初めて、欲のない人間というのを、知った。

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