いらない言葉
「――――このように、言葉は簡単に人を傷つける事が出来る刃物です、扱いを間違えれば人1人の命を奪う事だってできてしまいます」 道徳の授業で先生が言葉について語った 僕はそれをニュースを聞くように聞き流していた が、次の先生の一言には聞き流す事は出来なかった 「明日の学活の時間に、自分が使いたくない、いらないと思う言葉を考えて1人1人発表してもらいます」 …はい?、そんな事してどうするんだよ…ほんと先生は何考えてんの? 帰り道、宿題のプリントを右手に持ってのらりくらりと帰っていた、ランドセルがいつもより重い いらない言葉ってなんだ…? そう考えている間に家についてしまった 玄関のドアを開ける 「おかえりなさい、たくみちゃん」 「うん、ただいまおばあちゃん…ってちゃん呼びやめてよ」 「アッハッハ、ごめんねえお煎餅あげるから許してねえ」 今年で91になるおばあちゃんはいつもどうり元気そうだ (――…?) ここで僕は違和感を感じた なんだろう、少し寂しそう その日の夜、お母さんがおばあちゃんについて話をした 「おばあちゃんはもう、来週から老人ホームに行くことになったわよ、おばあちゃん、私達に迷惑かけたくないって、老人ホームに行きたいって言ってて、お父さんと相談しておばあちゃんを老人ホームに送る事が決まったの、寂しいかもしれないけど、きっとすぐに慣れるわよ」 目の前が眩んだ おばあちゃんがいなくなる…?なんだよ…それ いつもいるのが当たり前だったのに…なんで… そんな時に、一つの事に続かされた あまりにも現実的で残酷でどこまでも正しい事に 次の日の学活 「皆さんよく書けていますね、次はたくみくんですね、どうぞ」 黒板の前に立って一礼する、深呼吸して発表用紙を読む 僕は、とそこに書いてあるままの事を言う 「当たり前という言葉が一番いらないと思います」 皆の顔に困惑が浮かんだ そりゃそうだ、今まででた言葉は暴力やイジメなどのマイナスな言葉だけだったのだから けど構わない、言ってやる 「当たり前は、皆がよく使う言葉です、皆があって当然と思っている物、いつまでもそこにあると思っている物に対して使う事が多い言葉です」 数人頷いた 「けど、この世に永遠なんて、当たり前の物なんてありません」 数人が不快そうな顔をした 「いつもある学校も街も家族だって、いつ無くなるかわかりません、災害、事故、事件、ケンカ…それが当たり前じゃ無くなる原因なんていくらでもあります」 先生が興味深そうにこっちを見る 「それに、当たり前は他人の個性を壊す物でもあります、女の子なんだから可愛いものもってて当たり前、男の子なんだから女の子と結婚しなさい、〇〇なんだからこれができて当たり前…これを聞いて嬉しかった人なんていないですよね?」 クラスの皆が何かに気づかされた顔をした 「このように、当たり前という言葉はプラスな言葉でも、マイナスな言葉でもあります。 今まで出てきた言葉とは少し違いますが、当たり前という言葉を聞いて不快な思いをする人はいます、それに『当たり前は当たり前じゃない』んですそう思い込んでいるだけで、いつ無くなったっておかしくない物ばかりです」 おばあちゃんの顔が脳裏に浮かぶ 「当たり前だと思って誰かからの思いやりや誰かの心を傷つけていませんか?投げ捨てるような事はしていませんか?一度自分が当たり前だと思っている物は無くなる事の無い当たり前なのか、誰かを傷つけて無かったか、考えてみてほしいです」 一呼吸おいてから締めくくる 「以上の理由から、僕は当たり前という言葉を選びました、以上で発表を終わりますありがとうございました」 割れんばかりの拍手で教室がいっぱいになった 僕の次に発表する奴が頭を抱えてた それを見て僕は満足した 帰ったらおばあちゃんに今日の事を話してみよう 一つ一つの出来事を幸せも不幸も全部抱えて大切に出来るような人になりたいって言ったらきっと喜ぶな それから、迷惑なんかじゃないって、これからもいて欲しいって言おう、おばあちゃんが居なくなるのは寂しいって言ってみよう そう思いながら席に座った 次の奴の発表が始まる 頬杖をついて微笑む さーて、あいつからはどんな言葉が出るかな