私の名前
私のクラスメイトは中国人だ。日本人とは違う不思議な響きの名前。長さん。ちょう、と読む。 「れあ、どうしたの?」 友達の琴音が私の視線を辿って顔を顰めた。 「長さんのこと見てんの? やめなよ」 『何で?』は、禁句。琴音は、「あの中国人」とぼそっと呟いた。 琴音が『あの中国人』という度に胸が痛む。私のお母さんは中国人。私は中国人と日本人のハーフだ。 長さんのことは、嫌いではない。真っ直ぐで、自分の意見をしっかりと言う。私とは正反対だ。 「中国人って、なんかむかつく」 その瞬間、何処かで何かが切れる音がした。 「……やめて。やめてよ」 小さい声で私は言う。 「どうしちゃったの、れあ?」 琴音は戸惑っているようだった。 「やめてよ。中国人だからって馬鹿にしないで。そういうの、嫌だよ」 「……っ」 「私だって、中国の血をひいてる。私は中国人と日本人のハーフなの。琴音、私のことも嫌いなんだね。友達だと思ってたのに」 言いながら、涙が溢れる。 「な……そんなつもりじゃなかったし。言えば良かったじゃん」 琴音は投げやりになってそう言った。 「黙ってたのは悪いと思ってる。でも、他の人を馬鹿にするのはやめようよ。みんな一緒じゃん。同じ人間なんだよ。何で侮辱出来るの? 琴音。答えてよ!」 口調が激しくなる。それを止めたのは長さんだった。 「もうやめて」 「……長さん」 琴音が目を見開く。 「いいの。もう慣れてるから」 琴音は極まり悪そうに俯いた。話の流れを見ていた他の子たちもだ。 琴音は何も言わずに教室を飛び出した。長さんの口が、「ありがとう」と動く。 ―――長さんと、友達になりたい。 そう思った。