遥か向こうに君がいなくても
私はただ走っていた 私と、あの子の出会った所へ向かって。 名前さえ覚えていない 顔も覚えていない。 のに私はなんでこんなにも必死で、雪の中を走っているんだろう。 静かで、夜なのに妙に明るい もうすぐ夜が明けるのだろうか。 あの子と出会ったのは、10年ほど前 確か小学校の低学年。 私もあの子も人見知りが激しかったのにすぐに仲良くなった。 昔はどうでも良かったけど、今考えると不思議なもので どうやって仲良くなったなんて全然覚えてない。 "大人になってもずっと一緒にいよう" なんて言葉を何回も言い合った。 結局中学で離れてメールもしなくなってしまったけど。 だんだん知らない通りに出てきた。 そもそもあの場所はどこだっけ。 ...いや、絶対にこっちであってる。 理由も証拠もないけど、そんな気がした。 「はあ...ッはぁ......」 だいぶ息が切れてきた。 でももうすぐ。あと少しで着くから... 「あ...」 思わず声が出た。 ここだ。あの子と出会った、思い出の場所。 「あれ、来てくれたの?」 聞き覚えのある、透明感ある声。 「あ......ッ...」 走った後の息切れで声が出ない。 「だいぶ走ったんだね 体力は自信ないって昔言ってたのにね笑」 「...でもそっかぁ......最後に来てくれて嬉しいなぁ」 少し半泣き気味の彼女の声を聞いて涙が出てきた。 少しずつ、夜が明けてきて明るくなってくる。 「あ...もうすぐ夢が覚めちゃうね」 辺りが白み出してきた。 「ッ...遥...!!!」 私が声を出すと、彼女は涙を流した。 「...そっかぁ......名前思い出してくれたんだね... 最後に来てくれてありがとう。 ......ばいばい」 「待って...ッはる...」 ビュオッと強い風が吹いた。 「ッ遥ぁ!!!!!」 目を覚ますと私は泣いていた。 あの子...遥の声がまだ頭に響く。 なんで......そっか 「遥はもういないんだね」 おわり (感想・考察等を書いてもらえると喜びます。私が)