偽物
目覚めた時はもう、 私の心に感情なんてものはない。 何も感じないし、感じたくもない。 今ここに自分がいる理由もわからない。 だからもういっそ、 私は目覚めなくていい。 __________________________ 気がつくと私は踏切に立ち止まっていた。 空は青く、踏切の音が頭に響く。 暑いのにもかかわらず、心地よかった。 踏切の音がずっと聞こえる。 ここは時間が進まないのか。 波の音も聞こえてくる。 ただただ生きているよりもずっと心地いい。 ずっとこの世界にいたい__。 「...ずっとここにいていいの?」 鈴のように響く声が聞こえた。 「偽物の世界で感じて... 時間も進まない。どこにも行けない。 そんな世界であなたは___」 「...あ、れ......」 目を開けると辺りは白く、雪が降っていた。 踏切の音は弱々しく、波の音も静か。 雪は積もっているのに少しも寒くない。 まるで現実世界に戻っていっている気が__ 「これで良かったの?」 隣を見ると、私と同じ夏服の女の子が立っている。 髪は長く、肌は雪と一体化するように白い。 「何かを感じられても、ここは偽物。 意味がないんだよ」 「ッ...!それでも私は...」 突然踏切の音が大きくなる。 「え...何_」 女の子が踏切に飛び出した。 「...何も感じなくても、生きてるだけで幸せなんだよ。 こんな偽物の世界にいたらだめだよ」 「!?ッ待ってよなんで...!!!」 ____________________________ 目が覚めてしまった。 また何もない世界に帰ってきてしまった。 確か夢の最後、女の子は笑った。 あの子はああ言ったけど私はあの世界でいい。 そう思ったけど、私はあの世界にいるのをやめた。