自由に
自由になりたかった。 昔からいじめられていて、なにかも決められてきた。 好きな人。 好きな教科。 好きなシュミ。 全部決めつけられた。わたしは、自由になれない。好きなことができない。 いじめっこの名前は油良(ゆら)。油良と玉枝(たまえ)と六花(りっか)っていう三人グループだ。 特に油良が一番ひどくて、周りからも避けられている。 それなのに自称天才って言い張って、好きな人の前ではぶりっこになって。 そして、わたしの人生の全てを決めつける、最低なヤツ。 この世界にいなくていい。いてほしくない。 なんていう考えも頭をかすめた。 お母さんは昔から、人の傷つくことは言ったらダメよ、って言い聞かせてきた。 だから、言い返せない。いじめが酷くなる可能性だってある…。 そして、お母さんにはいじめられていることをいまだに言えずにいる。 あれ?あれ? 引き出しを何度も開け閉めして、中身を探る。 ない。ない! さあっと血の気が引いていく。 命よりも大事なやつが…なくなってる! すぐに分かった。油良たちだ。 遠くでクスクスと笑い声が聞こえた。 だけど…。 これだけには、絶対に手を出してほしくなかった。 命よりも大事なものが入ってたやつなのに。 ギュッと、唇を噛み締める。 お母さんには、傷つく言葉は言ったらダメよって言われてきたけど。 もういいよね。わたし、ガマンいっぱいしたよ。 もうガマンできない。もう無理! ズカズカと、わたしは大股で油良の前に立った。 「は……?な、なによ」 まさかわたしから来ると思ってなかったみたいで、油良は口をあんぐりと開けた。 すー、はー…と深呼吸をする。 今までたまっていた黒いヤツ。 全部叩きつけてやるんだ! 「わたしの大事なヤツ!どこにやったのよ!」 わたしの大声に、油良はともかく、玉枝も六花も、クラスのみんなも注目した。 それにも構わず、わたしは机を両手で思いっきり叩く。 「あれは!命よりも大事なモノだったんだよ!絶対に手を出してほしくなかったのに…!なんで盗んだの!」 「は?なんでそうなるのよ。しょ、証拠は?わたしが盗むわけ…」 「ある!アンタはいままでさんっざんわたしにいじめをしてきた!死ねとかブスとか、そんなことばをたくさん叩きつけたっ。盗むとしたら、アンタだけだよ!」 「ああもう、うるさいわね!大声でしゃべらないで!」 今度は油良が机を叩く。 …やっぱり、どれだけ言っても油良は変わらない。 なら、せめて。 「…わたしの…返してよ…」 ヒザから崩れ落ちた。それほど、大事なモノなんだ。 油良は、わたしを驚いたように見つめていた。 改心はしてない。油良のことだ。 アレっていうのは、お父さんの写真だ。 ずっと前に死んだ、お父さんの古い写真。 もう写真はアレしか残ってなくて、宝物だったもの。 命に代えても、……大事なもの。 と、目の前がにじんで、ぶわっと涙があふれた。 今までの苦しさと、こうやって言い返せたことに。 「油良さん。今までの話、聞いてたわ。もしかしたらとは思ってたけど、いじめをしていたのね。ガッカリだわ。職員室に来なさい。とことん説教してあげるわ。玉枝と六花も!」 先生が鬼モードになって、油良の手を引いた。 「はっ!?ちょっと待って!」 こうして、油良と玉枝、六花は職員室でしっかりとお説教を受けた。 わたしは自由になった。 もう油良たちはいじめてこなくなった。 写真も返してくれた。 好きな人も、シュミも、決められる。 いじめを受けている人へ。自由じゃない人へ。 立ち向かって、頑張ってください。 そうしたら、明るい未来は、絶対訪れるから!