短編小説みんなの答え:1

夕暮れと夜の間の色は

「ねぇ、知ってる?夕暮れと夜の間の色はーー」  そこで目が醒めた。俺は高校3年生にもなって、授業をサボって昼寝していた。どうやらその間に、ここーー屋上で、名も知らぬ少女と空を眺める夢を見たようだ。その少女が誰なのかは知らない。夢だから、顔も曖昧だ。ただ...微笑んだ雰囲気が、"あの人"に似ていた。  "あの人"とは、俺の中学時代の恩師だった。女性教師だ。あれはいわゆる"恋"というやつに近かったのだろうか、唯一心を許せる人がその人だった。  あの人はラベンダーが好きだった。俺は今も、あの人がくれた小さな手作りのお守りを持っている。『色んな人に心を開けるように』という願いの込められた、仄かにラベンダーの香りがする、萌葱色のお守り。通り魔から俺をかばって死んだ、あの人の... リーン、ゴーン...  昼休みになった。遠くから、賑やかな話し声と足音が近付いてくる。  ドアが開け放たれ、その正体が姿を現した。 「あーッ!やっぱりここにいた!牧村、授業サボり過ぎ!あたし、いっつも心配なんだよ?」 「...なんだ、園田か。...?後ろに居るのは?」  あの人、なのか...?  俺は園田の後ろにいる少女を見て、思わずそう感じてしまった。 「私、今日から転校して来ました、喜多川美紀です!よろしく。今、園田さんに学校を案内してもらってるんだ」 「あ、ああ。よろしく...」  ...あの人が死んで以来、俺は彼女の願いとは逆に人を避けるようになってしまっていた。  でも、なんとなくわかる。俺は、喜多川になら心を開ける...気がする。俺をもう一度、救ってくれる気がする。  そしていつかの夕暮れに、きっと、こう言ってくれるはずだ。 「ねぇ、知ってる?夕暮れと夜の間の色はーー」  ーーラベンダーの色なんだよ、と。

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