動くアルバムと導く人
このお話はある人しか知らない嘘かホントかわからない、そんな話 崖の上、冷たい風が音を立てて横切る巨大な崖 少年は、そこから飛び降りようとしていた 綺麗に揃えた靴と遺書 飛び降りる…その時に呼び止められた そこのお兄さん、死んでしまうなら僕のお相手をしてくれよ そこには学徒服をきた青年がいた 片手には少し分厚い本 どうせ死ぬし、そう思い少年は青年と話す事にした どうして死のうとしたのか 家族は大丈夫か 一度きりの人生を捨てようとすることに後悔はないか そんな話 ふと少年は、青年の持っている本が気になった 聞くとそれはアルバムらしい しかも入れた写真が1分間だけ動くんだとか 試しにアルバムを開いた 青年らしき人物の白黒の写真が確かに動いていた 教室の様な場所で元気に手を上げてたり 子犬と戯れてたり 木に登って大人に怒られてたり 少年はその摩訶不思議なアルバムに心奪われた 少年はしばらくアルバムを見たあとに 最後だけと自分の写真を取り出した 唯一の家族写真 家族全員が揃った写真はこれだけらしい 写真をアルバムに入れる 桜の下 真ん中の少年が母親に抱っこをせがむ 母親が優しく笑い、少年を抱える それをみて父親は微笑み、少年を頭を優しく撫でる それを嬉しそうに少年は笑う 絵に書いた様な美しい家族 あまりに微笑ましい光景に青年も目を奪われた 少年は泣いていた 少年は 「僕は…こんなにも…愛されていた…!愛されていたんだ!」 とまるで子供の様に声を上げて泣いた きっと少年は、今の複雑な家族関係に悩まされて自分の存在意義を疑ってしまったのだろう 青年は少年に、あと少しだけ生きてみないかと提案する 少年は頷いた、少年の目は明るかった 遠くなってゆく少年の背中を見て満足したように青年は消えた きっと青年は生きている人じゃない だけど、絶望の淵に立つ人を希望の光へ連れ戻す存在で在ることは確か 青年にとってそれは自身の存在意義であり、希望なのだろう