短編小説みんなの答え:2

約束された事件 ーガーネットレディの美学ー

「ねぇ探偵クン。ボクと組まないかい?」  それは"禁断"の契約だった。 「なに、キミが負い目を感じることは無いよ。ボクがボクの仕事をこなしているだけなんだからさ。そうだろう?」  俺が何処かへ行く度に、誰かが── 「キミの頭の回転の速さは類い希なものだ。勿体無いと思うのだがね」  誰かが── 「さぁどうだい?組めばWin-Winだ。キミの仕事"も"増える。」  ──死ぬ。 「契約──するかい?」  ああ、俺って最低だ。   ─春夏冬(あきなし)探偵事務所─ 昼下がり  俺は探偵の春夏冬勇氷(あきなしゆうひ)。  いきなりで悪いが言わせてもらう。  俺は死神と契約した。  メリットは言わずともわかるだろう。デメリットは──まぁ、それも察してくれ。 「勇氷クン、コーヒー淹れてくれるかい?」 「...はいはい」  この死神の名前は紫雲灯(しうんともり)。一応、俺の"助手"ということになっている。  ...俺の助手なのに、主導権はあっちにあるワケだが。 「ホント、仕方ない奴だな」 「あっはっは!まぁ、そう言ってくれるな。ボクが来てから増えたんだろう?シゴト」  否めない事実を言われてぐうの音も出なくなったところに、灯が衝撃のヒトコトを放つ。 「勇氷クン、この世には夜から出る豪華客船があるのは知っているね?今日はそれにのるよ」 「えっ...ええええええええっ!?」 「チケットはもう買ってある。事件には"おあつらえ向き"だろう?ボクの粋な計らいさ。ほら、早く行くぞ!あっはっは」  あっはっはじゃねぇよ! 「俺が丹精込めて淹れたコーヒーは!?」 「あー、大丈夫。帰ったら飲むよ。ボク、冷えたコーヒーも好きだからね」  ...腹壊しても知らねぇぞ。   ─豪華客船ガーネットレディ─ 同日夜 「ディナーの時間まであと少し!事件の香りがするね」 「気が早いぞ。あと、もうちょっと落ち着け」  俺達は、それなりに広い二等船室でグダグダしていた。すると、午後7時を知らせるささやかなチャイムが鳴る。 「さぁ行こうか勇氷クン!ディナーの時間だ!」  灯は俺の手首を引っ張って足早にディナー会場へ。痛い!血止まるって!  ディナー会場では既に沢山の人達が夕食を楽しんでいた。 「さぁ、最期の晩餐を食べているのは彼女さ」  灯が指差したのは、深紅のドレスに身を包んだ、妖艶な長髪の女性だった。  まさに、ガーネットレディという感じだ。──と、その瞬間。 「うっ...あ...」  ワインを口にしたその女性が呻き出し、倒れた。恐らく、亡くなった。 「──キャアアアー!!」  一瞬の沈黙の後の、悲鳴。  それから先は探偵の出番のようだった。  被害者の名前は、兼井裕子というらしい。  容疑者は、向かいの席に座っていた彼女の恋人、原田光典。  彼女にワインを運んだウェイトレスの牧村和絵。  彼女の席の近くにいた村川俊彦、この3人だ。 「...原田さん、牧村さん。あなた方のワイングラスを見せてください」 「わっ、私、運んだだけ、なのに...」 「ケッ。グラスなんて見て、なんかあんのかよ」  俺は2人のグラスをじっと見つめ、そして見比べた。 「──分かったぞ」 「なんだと!?」  ...これが、"決められていない"事件だったら、どんなにまだ良かったか。 「犯人は...牧村さん、貴方だ」 「なっ、なんで!私がなにを...!」 「貴方のグラスにはあって、原田さんのグラスにはないものがある。──口紅のアトだ。恐らく、彼女が毒を飲んだ後でグラスをすり替えたのでしょう」 「ウソッ!きちんと拭いた筈──あっ......もう、オシマイね...言っちゃった。そうよ、私がやったわ、あの女をね...」  牧村さんはその場にくずおれた。 「動機を...教えていただきましょうか」 「俊彦さんは、私のものだった筈なのに、あの女、恋人がいるにも関わらず俊彦さんをたぶらかしてっ...!」 「和絵さん...本当に、済まなかった...」  村川さんの土下座──決死の謝罪に、彼女は暖かい視線を送る。 「いいのよ、ダーリン...面会、来てね?」 「ああ、ああ、行くとも──」  決め手となった証拠を遺したのは、兼井裕子──ガーネットレディ、その人なのであった。  彼女の"美しい女性"としての意識が...複数の男性を魅了するという悲劇の種になり、そして、事件を解決する手がかりにもなったのだ。  部屋で俺らは話した。 「...なぁ、灯。今回の事件、お前がいなかったら、起こってなかったりするのか?」 「馬鹿なことを訊くな、キミも。起こっていたに決まってるだろう?女の恨みはコワイよ」 「......そうか」  ガーネットレディは、黒い海原をかき分けて進んでいく。  夜はまだ、明けないのであった。

みんなの答え

辛口の答え

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面白い!!

キャラクターの設定がしっかりしてて、読んでてとても面白かったです! 死神の性格がすごい好きです!!


めっちゃ好き!!!

こういうどろどろしてるの好きです 他の作品もみたい!!


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