信じていいのかな?
私は、胡蝶 海(こちょう うみ)。とびぬけて得意なことが一つもない、チビな14歳。この日、新しく後輩ができた。 「矢木悠です」「原花蓮です」吹奏楽部に入部してくる一年生が順番に名前を言っている。「大原空です!」ほかの声より一声大きい声に私はびっくりした。でも、「空」という男の子で自己紹介が終了し、部長の渥美が話したから、男の子に声をかける暇はなかった。 「―はい。きょうはここまで。一年生たちも帰っていいです」渥美の話が終わると、みんな渥美のほうへ走っていった。それもそう。渥美は私とは対照的で明るくてまとめるのが上手で人気者で…。「あの」振り向くと大原君がいた。「あ…大原君ですよ…ね?どうしたんですかっ…?」歯切れ悪く言ってしまう。「案内、してもらえないですか。僕、入学式の時、休みで」「そうだったんだ。私でよければいいですよ」「ほんとっ!?」大原君が目を輝かせた。「うん。じゃあ、行きましょうか。えっと―」…「―ここで最後です。なにか、わからないところがあったら、また。私はこれで…」「ありがとうございました。僕、家まで送るよ」「悪いよ」「いえ、僕のせいで遅くなったから」「…じゃあ」そう言って家まで送ってもらった。でも、次の日からは全然しゃべることなくいつもの日常に戻った。でもある日、「先輩」「な、何?」部室で片づけをしていると、大原君が来た。「僕、胡蝶先輩の真面目なとことか、一生懸命なところ、好きです!付き合ってください」えっ…。こ、コクハクってこと?「で、でも…私なんかじゃだめだよ」「…わかりました。でも、今まで通りの先輩後輩の関係でお願いします」「ご、ごめんっ」私は一切振り返らずに部室を後にした。次の日部活に行っても大原君は普通に話しかけてくれた。 「先輩、これっ」大原君がさしだしたのはクマのぬいぐるみだった。「あ、ありがとう。すごい、可愛い…」大原君は、はにかんだ。「 誕生日おめでとう!」「ありがとう!」そんなふうにしてとうとう三年生の卒業式が行われた。私は、なんとか第一志望の槻川原山高校に合格できた。「先輩、槻川原山高校合格、入学おめでとうございます!」「ありがとう。大原君のおかげだよ。あの、言いたいことがあるの」「は、はいっ」大原君は急に顔が固まった。「好き」「えっ」「大原君のことが好き!」「先輩それ…本当ですかっ!?」「うん」私が複雑な顔で大原君を見ると大原君はニコッと笑ってくれた。「僕も、先輩のことが好きです!」私は安心して少し顔がほころんだ。 「高校に行っても、よろしくね!」私は、精一杯大きな声を出した。