憎しみは内側から。
鼻をすん、と目の前の花を嗅ぐ。 花は柔軟剤によく使われがちな匂いがする。僕はこの匂いが好きではない。 その花を水が入った花瓶に一輪の花を挿す。 それを嫌いな人の机にこつんと、さりげなく置く。 その机は寂しそうなくらい物が置かれていなかった。けど持ち主には相応だろう。 「…猫埼、さん?」 気配を感じて振り返ると一人の女性が僕を見つめる。 呉坂さんだ。僕の同級生 「どうしたの」 彼女ににこりと笑ってやる。 呉坂さんは一輪の花を指差して答えた 「これ、なんでここに置いたの…?」 その表情は見てはいけないものを見たような、バツが悪そうな顔をしている。 「…花言葉、調べて。」 呉坂さんには教えられないことだ。 それだけ伝えて僕は呉坂さんの横を通り過ぎ、 教室から抜け出した。 呉坂さんの困惑した声が聞こえたが、気にしない。 一輪の花、そう黒薔薇の花言葉は、 憎しみ。 僕の嫌いな人は呉坂さんと付き合っている。 僕はハツコイの人の横を通り過ぎたんだ。 つかつかと徒歩は止まらない。それと同時に僕の頬を伝う透明な液体も止まらなかった。 いつか髪を切ろう。それと同時に、哀しい僕の未練も切ってくれるはずだから。 さようなら、初々しかったぼくの恋心。 end