短編小説みんなの答え:1

君がくれた最後の思い出

8月中旬、夏休みの真っ最中で真夏の暑さが厳しい時期、 僕は一番大切な人を亡くした。 僕の真っ暗な人生を変えてくれた「涼菜」がこの世からいなくなった。 僕「白川冬人」がそのことを知ったのは、鈴菜の親友の添子さんからの電話だった。 朝起きると添子さんから大量のメールと電話が来ていた。 嫌な予感がして携帯を開かなかった。が、また電話が鳴り僕は反射的に取ってしまった。 「涼菜、死んじゃった....」 その言葉を聞いた瞬間、頭が真っ白になり何も考えれなくなった。 分かっていた。分かっていたがやはり悲しく、そして悔しかった。 涼菜は学校の図書室で偶然知り合った人だった。 桜が満開を迎えた頃の4月、昔から人と関わるより本を読む方が好きだった僕は図書室で静かに本を読んでいた彼女になんとなく興味を持ち、話しかけた。 「ねえ、君なんの本を読んでるの?」 彼女は不思議そうに僕を見ながら 「恋愛系の本。これ超感動する!」 そう言い彼女は本を見せてくれた。僕も見たことある本だった。 なんとなく話していると彼女は唐突に自分の余命があと1年だということを僕に言った。 僕は何かの冗談だと思ったが涼菜は本気のようだった。 どうやら彼女は去年の夏に病気が発覚し余命1年と宣告されたようだ。 「私、病気だから学校にいるときは、いつもここにいるの。学校に来ることの方が少ないよ」 彼女は病気が発覚してからほとんどを病院で過ごしているらしい。 今日はたまたま学校に行ける体調の日だったのだ。 そういうと彼女はポケットから何か本を取り出した。 「その本は何?」 「これ?これは本日記だよ。私が読んだ本の感想とかをここに書いてるの。」 そう言い、彼女はさっきまで読んでた本の感想を書き始めた。僕は特に見る気はなかったので、本を読んで待っていた。 書き終わると彼女は席を立った。 「私時間だから帰るね。」 「うん。君はこの時間はここにいるの?」 「ううん。普段はずっと病院。暇だったら遊びに来ていいよ。」 そういい、彼女は自分が入院している病院と部屋番号を書いた紙を渡してきた。 「じゃあね!」 「じゃあね」 そう言い彼女は車に乗って帰ってった。 そんなことから始まった彼女との関係だったが、思ったより悪くなかった。 むしろ楽しい。彼女のお見舞いに病室に行くといつも、この本がどうとか あの本はおもしろいとかを2人で話す。僕はそんな時間が夢のようでいつまでも続いて欲しいと思っていた。 いつしか僕は彼女のことが好きになってた。 でも僕はその気持ちを心の中にしまっておいた。 告白したとしても、付き合えたとしても、その先に待っているのは悲しい未来だったからだ。 しかし涼菜はだんだん元気がなくなっていき お見舞いに行ってもずっと寝たきりの時も増えていった。 それでも、涼菜は起きているときは気丈に振る舞い弱音を一切吐かなかった。 僕は、彼女の命のタイムリミットが近づくにつれ、奇跡が起こってくれないかと、 毎日願うようになっていった。 そんな中のことだった。だから信じれなかった。信じたくなかった。 放心状態で病院に向かった。添子さんも涼菜のお母さんも憔悴しきっていた。 彼女の葬式は少数で行われた。 僕と添子さんはお母さんの希望で葬式に参列することになった。 まだ、元気だった頃の笑顔いっぱいの涼菜の遺影を見て僕は胸が苦しくなった。 葬式が終わり、帰ろうとしたとき涼菜のお母さんに止められた。 「冬人くん、これ。涼菜が死ぬ前これを冬人くんに渡してって」 そういい、渡してきたのは、彼女がよく書いてた本日記だった。 家に帰り、本日記を読んでみる。 序盤十数ページは彼女が今まで読んだ本の感想が書いてあった。 ひとまず、全部をパラパラっと目を通す。 すると、最後らへんに文章が書いてあった。「拝啓冬人様へ」そう書かれていた文は彼女の字に間違いなかった。 「拝啓冬人様へ これを読んでもらえて嬉しいです。 今、これを読んでいるということは私は今天国からこれを読んでいる冬人くんを眺めていることでしょう(笑) ありがとう。君のおかげで私の最後の半年は忘れられない思い出になりました。 そういえば私が生きている間に伝えれないと思うものがあるのでここに書いときます。 私は余命宣告を受けてから恋をすることを諦めていた。その先に悲しい未来があることを分かっていたから。でも、君と過ごすうちにその考えは変わっていきました。限りある時間だからこそ素敵なんだと分かりました。冬人くん、ありがとう。そして大好きだよ。 あんまり早く死なないでね。冬人くんが幸せになれることを心から願っています。涼菜」 いつの間にか泣いていた。嬉しかった。悔しかった。 なんで僕も伝えなかったんだろう。 窓の外を見て小さな声で言った。 「僕も好きだよ。涼菜」

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