短編小説みんなの答え:0

「勇気」

私は菜々子、中学一年生。今、家出してる。 なんでか?それは、5歳のころ事故で両親が亡くなってから、おじさんとおばさんの家にいたけど、虐待を受けていたし、 新しい学校でも、いじめを受けていた。 それもこれも、耳が聞こえないから。 一応、補聴器はつけているけど、片方はおじさんに壊された。 今日で、家出して一ヶ月。お金を節約するため、ここ一週間は何も食べていない。 夜。路地裏の隅に座り、ぼうっとする意識の中で、死んだお母さんとお父さんのことを思い出していた。 あまり顔は覚えていないけど、声だけは思い出せた。 「…菜々子、あなたの耳が聞こえなくても、お母さんたちは、味方でいるからね。何かあったら、すぐに教えてね」 お母さんの優しい声が蘇る。 「菜々子!今日は遊園地に行こうか!乗りたがってた観覧車、乗れるぞ!」 お父さんのはっきりとした声。あの時は楽しかったなあ。 お母さんは、泣き虫な私にこう言い聞かせていた。 「菜々子の心の中には、たくさん勇気があるんだよ。でも、今はその勇気をうまく出せていないだけ」 小さかった私は決まって、 「……私、勇気、出せない?ずうっと?」 と聞いた。 でもお父さんは、 「でも、勇気を出せるようになるのは突然のことなんだ。菜々子が勇気を出せるまで、一緒にいるからね、………」 そう優しく言って、頭を撫でてくれた。 その大きな手が、大好きだった。 しかし、『一緒にいる』という言葉は、一瞬で打ち砕かれた… 「…はっ…」 あれ、寝てた…? うーん…あの最後の言葉、思い出せないんだよね… お父さんとお母さんにしか言われたことのない言葉な気がするけど… ゆっくりと立ち上がって歩き出しながら、お父さんの言葉を思い出す。 「勇気、か…」 大通りに出る。 いつになったら、勇気を出せるのだろう… 私なんかが、勇気を?出せる? 弱くて、泣き虫で、耳が聞こえなくて、いじめられて、虐待されて。 服も顔も汚い私を、みんな見つめてる。 …そんな、わけがない。 「…!…違う、私なんかが、じゃない」 私が、私が今、できること、したいことは…? 思わず立ち止まったところには、「小中学生相談室 無料です!いつでもどうぞ!」と言う看板があった。 深呼吸すると、お父さんが最後に言った言葉を思い出せた。 「大丈夫」 一歩、踏み出す。 これが、私なりの、「勇気」だ。

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子供こどものSOSの相談窓口まどぐち[文部科学省]

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