短編小説みんなの答え:1

主人公なあの子が大嫌い。

あれは、去年の暑い夏の日だった。エアコンだって少ない田舎の夏祭りで買ったラムネが冷えていておいしいように感じる。 そんな日だった。あの子と出会ったのは。 あの子は学校の友達とこの田舎に遊びに来ていた。都会の子でもこんな田舎に来ることがあるんだと、初めて知った。 あの子と初めて話した時、一瞬で思った。あぁ。この子は俺とは違う。優しくて聡明で、真面目で仲間思い。 そして、強くてかっこいい。あの子は、俺が欲しいものを全部持っていた。一瞬で人の心をつかんでしまう。 こういう人が漫画やアニメの主人公になるんだろう。俺がやりたいこと、あの子なら全部持っているし、全部やり遂げてしまう。 あの子になりたいな。そう考えて今日に別れを告げた。 次の日。 夏祭りに出かけた。何も変わっていない。にぎやかで微笑ましい。りんご飴とか焼きそばとか、ラムネとか。 大好きなもので埋め尽くされていて気分がいい。でも射的なんかをやってもうまくできなかった。その時だった。 あの子が夏祭りにやってきた。友達と一緒に楽しんでいた。その時、小さな声で呟いてしまった。 「いいなぁ。」 あの子にとって何気ない日常が、自分にとっては天よりも高いことだったのを今、この目で見て実感した。 自分もあんな日常を送ってみたい。そしたら、ずっと嫌気がさしていた田舎でも、何かが変わるかもしれない。毎日が輝くかもしれない。 それが新しい夢。 毎日運動したり、勉強したり、いつも自分がやっていないことをやれば、何かが変わるかもしれない。 でも、頑張っても変わらないことのほうが多かった。自分でも主人公になれることを目標に頑張っていたけれど、 そもそも主人公って、生まれた時から主人公だ。生まれたときに授かったものを変えることはできやしない。 あぁそっか。主人公って、誰でもなれるわけではないんだ。 世界中のみんなが主人公になってしまったとき、主人公の友達とかの周りの人って、いったい誰がやるんだろう。 いったい誰が主人公に助けられるんだろう。・・・・・・。そういうことだ。自分が生まれてくるときに授かったものは、 ・・・・・・・・・主人公の周りの人というもの。 そうだったんだ。涙があふれる。自分の一番の夢でさえもただの夢でしかなくて、目を開けてしまえば、現実を見てしまえば、 それはただの想像でしかなくて、俺はあの子のことが大嫌いだったけど、本当は、やっぱりあの子に心をつかまれて、 あこがれて、あこがれて、陰でそっとあの子を見ていただけだったんだな。また生まれることができたら。 もしもまた何かを授かることができたら。きっと願うだろう。                   「大嫌いで大好きな、あの子になりたい。」

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