空の上のキミ
アイドルを目指していた、一個下の幼馴染・ソラ。 オーディションに行く途中、交通事故で死んだ。 「ソラがアイドルになったら、名前の通り空の上の人になっちゃうよー。地面みたいなわたしには、絶対とどかないなぁ」 そんなことを言って、笑顔で見送ったのに。 「ありがとう」とか、「大好き」とか言えないまま、本当に空の上の人になっちゃった。 ソラのサインを持つ手が、小刻みに震える。 ……泣いちゃダメ。わたしがこんなんじゃ、ソラが耐えられない。 溢れそうになった涙を、ぐっと堪える。 不思議だよね。名前が書かれた、ただの紙切れなのにさ。 こんなにも、その人の魂と気持ちが、詰め込まれている。 気が付けば、サインが水で濡れていた。 ……これ、わたしの涙? ああ、耐えられなかった。気持ちが、抑えられなかった。 口からポロリ、言葉がこぼれ落ちる。 涙と共に、いろいろな言葉が流れ出る。思い出が、駆け巡る。 今まで、ありがとう。大好き。いつまでも、大好きだよソラ……。 時計の針は、10時前を差していた。 急いで支度をして、カバンにソラのサインを入れた。 「ソラ。わたしね、ソラの夢を代わりに叶えようと思う」 靴を履きながら、ソラの写真に向かってそう言う。 「今から、オーディションなの。だからね、空の上から見守ってて」 最後まで、笑顔で。もう、涙はこぼさない。 玄関のドアを開ければ、明るい太陽の光が差し込んでくる。 見上げれば、真っ青な空が、どこまでも澄み渡っていた。